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経産省が半導体で新戦略 経済安保に直結する「戦略物資」、問われる本気度

 経済産業省は4日、半導体の開発や生産体制の強化に向けた新戦略をまとめ、国際的な存在感が低下した半導体産業の再興に「国家事業」として本腰を入れる。民生用から軍事用まで広く使われ「産業のコメ」と呼ばれる半導体は、米国と中国の技術覇権争いの中で、その安定調達が経済安全保障にも直結する「戦略物資」といえる。各国・地域が強力な政策支援を通じて半導体産業の競争力底上げに動く中、日本の出遅れ感は否めず、政官民の本気度が問われる。

 「死活的に重要な戦略基盤技術だ。まさに、半導体を制するものが世界を制するといっても、決して過言ではない」。自民党有志の半導体戦略推進議員連盟は今月3日に菅義偉(すが・よしひで)首相に手渡した決議文で、異次元の支援による半導体の国内製造基盤の強化を求めた。

 議連の最高顧問の一人である安倍晋三前首相は5月21日の初会合で、半導体について「全産業のチョークポイント(急所)となりうる」と重要性を強調した。

 日本は半導体工場の数が世界で最も多いが、先端的でない製品を手掛ける工場が多く、老朽化などの課題も抱える。技術開発でも競争力が低下している。先端半導体は海外からの輸入に頼っているのが現状だ。

 経産省は4日発表した「半導体・デジタル産業戦略」の中で、「日の丸半導体」凋落(ちょうらく)の主因を分析。1980年代の日米貿易摩擦などで成長にブレーキがかかったこと▽半導体産業の世界的な潮流をとらえきれなかったこと▽バブル経済崩壊後の長期不況の中で国内企業が大胆な投資を行えず、国家ぐるみで半導体産業の育成を進めた韓国や台湾、中国に後れを取ったこと-などを列挙した。

 米中対立や足元の世界的な半導体不足を踏まえて、主要国・地域の間では半導体産業の競争力強化に向けた動きが相次いでいる。

 バイデン米大統領は、520億ドル(約5兆7000億円)の半導体産業投資を含む法案に賛意を示す。欧州連合(EU)欧州委員会も3月、域内で生産する最先端の半導体の世界シェアを現在の10%程度から、2030年までに少なくとも20%に引き上げるとした。

 韓国政府は5月13日、半導体産業の競争力強化に向けた「K-半導体戦略」を発表。2030年に世界最高の半導体サプライチェーン(供給網)の構築を目指し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「総合半導体強国という目標を必ず達成する」と語った。

 日本政府も、台湾半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)の研究開発拠点の茨城県つくば市への誘致にこぎ着け、5月にはTSMCが日本企業20社超などの参画を得て先端半導体の製造技術の研究開発を進める計画に約190億円を拠出して支援する方針を決定。今回の経産省の戦略では、「ファウンドリー」と呼ばれる海外の受託製造企業との合弁工場の設立などを通じて国内に製造基盤を確保する方針を明記した。

 経済安保の観点から、半導体の製造基盤を自国・地域に囲い込む国際競争が熾烈(しれつ)さを増すのは必至だ。

 「時代の流れに日本だけが取り残されることがあってはならない」。梶山弘志経産相は3月、省内の検討会議でこう呼びかけた。危機感が国家戦略の具現化に昇華されるかが鍵を握る。(森田晶宏)

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