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衆院選「解散なし」が自民に浮上 11月も可能、ワクチンに期待

 今国会の会期末が16日に迫り、内閣不信任決議案の提出をめぐる与野党の駆け引きが続く中、菅義偉(すが・よしひで)首相が衆院解散に踏み切らず、10月21日の衆院議員の任期満了に合わせて選挙戦に突入するシナリオが自民党内で取り沙汰されている。現行憲法下で任期満了に伴う衆院選を実施したのは1例しかないが、背景には、選挙よりも新型コロナウイルス対応を優先させたと理屈が成り立つ上に、時期が遅れるほど有権者がワクチン接種の効果を実感できるとの計算もありそうだ。

 「ワクチンが広がってきている。昨日よりも今日、今日よりも明日が良くなるはずだ」

 首相に近い政権幹部はこう語り、ワクチン接種への手応えを強調する。

 衆院解散の時期としては、今月16日の今国会会期末をはじめ、夏の東京五輪・パラリンピックの間や後が浮上している。衆院選前に新型コロナの感染拡大を受けた経済対策として令和3年度補正予算案を編成するか成立させるべきだとの意見も根強い。また、ある自民幹部は「ワクチンが広がれば自民は有利になる」と述べ、解散を伴わない任期満了による衆院選の可能性も指摘した。

 公職選挙法では、任期が終わる日の前30日以内に選挙を行うことが定められており、9月21日から10月20日までの間に選挙を実施することになる。投開票日は日曜となるのが慣例なので、9月26日、10月3、10、17日が候補だ。

 さらなる先延ばしも可能だ。公選法の規定で8月29日以降に国会が開会している場合、「閉会翌日の24~30日後」に選挙を実施するとの規定が適用される。衆院議員の任期満了日である10月21日に閉会する日程であれば、解散しなければ11月14日、10月21日に解散すれば公選法の規定に従い40日以内の11月28日までが選択肢となる。

 現行憲法下で解散を伴わない衆院選は、昭和51年の三木武夫政権下で行われた。三木氏は田中角栄元首相が関与したとされるロッキード事件の真相究明に乗り出して党内の反発を招いて事実上解散権を行使できなかった。衆院選で自民は過半数割れの惨敗を喫し、三木氏は退陣した。首相はこの「ジンクス」にも向き合うことになりそうだ。

 もっとも、首相を支える自民の二階俊博幹事長は野党が今国会に不信任案を提出した場合、「ただちに解散の決意はある」と繰り返している。首相もぎりぎりまで手の内は明かさないとみられ、首相周辺も「首相が決めることだ」と語った。

(永原慎吾)

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