国内

高齢者接種の「完了」、自治体で定義ばらばら

 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種で、政府が掲げる7月末までの「接種完了」について、完了の定義が自治体ごとに異なっていることが10日、分かった。100%ではなく、一定の接種率で区切る自治体があれば、予約の受け付け状況を目安とする自治体もある。政府目標に合わせて軌道修正したケースもあり、専門家は「完了時期を早めるための定義であれば本末転倒だ」と指摘する。(竹之内秀介)

 7月末までの高齢者接種完了の政府目標に対し、今月1日時点で全国1741自治体のうち98・7%に当たる1718自治体が実現見込みと回答。5月12日時点の1490自治体(85・6%)から約3週間で200以上の自治体が政府目標に沿う形に前倒しした。

 ただ、接種完了の定義について、自治体への調査や調整役を担当する総務省は「地域によって事情が異なる」(地域政策課)として明確に定めておらず、自治体ごとに基準がバラバラになっているのが実情だ。

 一部の自治体は過去のインフルエンザワクチンや集団免疫の獲得を期待できる接種率をもとに、完了とする目安を独自に設定。神戸市は高齢者全体の80%に当たる約35万人が2回目の接種を終えることを完了としている。また、東京都東大和市は接種率70%に、埼玉県川口市は65%に達した時点で完了とする方向だ。

 一方、基準そのものがあいまいな自治体もある。長野県松本市は新規の予約の受け付けが落ち着いた時点で、接種希望者が打ち終えたと判断して完了と見なす。静岡県熱海市は7月末までに市内の高齢者の大半を接種できる態勢を整えているとして、実際の接種率に関わらず、7月末で完了とする予定という。

 そもそも接種完了の定義を明確にすることは困難とされる。副反応を懸念するなどして接種を控える人が一定程度出ることが想定されるため、100%の接種率は見込めないからだ。そこに菅義偉(すが・よしひで)首相の大号令があり、自治体側が完了の定義を設けざるを得なくなったという経緯がある。

 ある市の担当者は「自治体側の判断で拙速に接種完了を公表した場合、これから接種を受ける住民に『もう受けられないのか』と余計な混乱を招きかねない」と不安を口にする。

 別の市幹部は「総務省から7月末に接種を完了するよう何度も働きかけを受けたので、7月末に達成できる接種率を完了の基準にした」と明かし、「ガラス細工のように積み上げた接種完了にどれだけ意味があるのか」と疑問を呈した。

 同志社大の野田遊教授(地方自治論)は「国が今から統一基準を示しても遅くはない。実際の進捗(しんちょく)状況をないがしろにして『完了』と発表する意義は見いだしづらい。接種を迅速に進めたい国の立場は理解するが、自治体や住民の視点に立って政策を進めるべきではないか」としている。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus