国内

ワクチン接種、医師会連携で加速 予約なしの病院も

 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種をめぐり、地元医師会との連携を築けている自治体で接種ペースが順調なケースが目立っている。課題とされる打ち手の確保は集団接種会場への開業医派遣のほか、多くのかかりつけ医に個別接種の協力を取り付けるなど計画的に実行。ワクチンの安定供給を受け、事前予約なしに当日に接種を行う医療機関独自の取り組みも出始めている。(永井大輔)

 東京都墨田区では1回目の接種を終えた高齢者は5割を超え、3割に満たない国全体の接種ペースを大幅に上回る。背景には関東大震災や東京大空襲など多くの災禍に見舞われた歴史があり、以前から災害医療に関する防災訓練を地元医師会・病院と共催するなど協力関係を築いてきた。

 ワクチンについても、国が米ファイザー製ワクチンを承認する前の昨年12月に医師会との調整を始め、集団接種会場への開業医派遣に全面協力を得た。今年3月時点で集団接種会場を決め、医療従事者の確保を終えていたという。

 また、準備を始めた当初、投票券の発送や投票所の運営などのノウハウがあった選挙管理委員会の職員がワクチン接種担当を兼務したことも奏功した。当時選管事務局長を兼ねていた区保健所の岩瀬均次長は「会場内の住民の動線作りなどを含め、選挙の経験を生かせた」と振り返る。

 今月1日には64歳以下の住民にも接種券を一斉送付し、7月中に全世代への接種開始を目指す。看護師や歯科医師など新たな打ち手の確保も視野に入れており、「医師会との協力に加え、新たな知恵を絞る必要がある」(岩瀬氏)。

 日頃から高齢者と接し、基礎疾患などを把握している「かかりつけ医」による個別接種を重視し、接種加速につなげた自治体もある。市内に大規模病院がない東京都小金井市は市医師会などの協力も得て、集団接種会場2カ所に対し、46カ所の指定医療機関で個別接種を実施。8日時点で61・5%の高齢者が1回目の接種を済ませた。

 鹿児島市も集団接種会場は1カ所で、約260カ所の個別接種が中心。集団接種の約800人に対し、個別接種が約3万人と全体の9割以上を占めており、市の担当者は「高齢者は副反応を恐れがちで、交通手段がないために集団接種会場に来られない人も多い。普段から受診している身近な医療機関での接種が好ましいと判断した」と話す。

 一方、東京都江戸川区の東京さくら病院は「区からワクチンが安定的に供給されるようになった」(東海林豊院長)として、5月末から事前の予約不要で、来院当日に接種する独自の取り組みを開始。すでに2千人以上の高齢者に1回目の接種を行った。

 区内に12カ所ある系列のクリニックと連携することで、打ち手の確保も解決。ファイザー製ワクチンの解凍後の保管期限が1カ月に延び、日々の接種人数を計画的に決めておく必要がなくなったことも、当日接種の実現を後押しした。

 結果的にキャンセルの心配がいらず、病院内の入院患者から接種候補者をリストアップしておくことで余剰ワクチンの廃棄も防いでいる。樋浦裕里看護部長は「高齢者は日によって体調が変わるケースもあり、事前予約ではキャンセルの可能性が高まる。当日接種の方がワクチン廃棄のリスクも低い」と強調した。

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