国内

緊急事態宣言の解除 “リベンジ消費”刺激に期待 五輪や変異種はリスク要因

 政府が沖縄を除く9都道府県で緊急事態宣言を20日の期限で解除することで、経済活動の正常化に期待が高まっている。高齢層で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、これまで押さえ込まれた分野の消費が活性化する“リベンジ消費”が起きそうだ。ただ、海外から多数の関係者が入国する東京五輪の開催や変異株拡大で感染「第5波」が広がった場合、持ち直しかけた景気が再び冷や水を浴びることになる。

 「高齢者ほどワクチン接種が早く済む。65歳以上の割合が高い品目ほど、リベンジ消費の勢いも大きい」

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストはこう指摘する。7月末に高齢者が2回目の接種を終えた場合、8~10月には一部の分野から先行して消費が盛り上がり始めるとみる。

 コロナ禍で支出が抑制されたのはサービス消費が中心だ。2019年の統計で65歳以上の消費の割合が高い分野をみると、ゴルフプレー料金(59.7%)、スポーツクラブ使用料(49.5%)、温泉・銭湯入浴料(47.9%)などが挙がる。逆に外食(25.0%)、スポーツ観戦料(18.9%)、遊園地入場・乗り物代(8.0%)などは若者など他の年齢層が多く、相対的に回復が遅れそうだ。

 ただ、こうした秋にかけて景気の持ち直しを見込むシナリオは、宣言解除後の経済が正常に動き出すことが前提だ。東京五輪開催の影響が見込まれる人出の増加がインドで猛威を振るった変異株の拡大などにつながった場合、8、9月に再び宣言が発令される懸念もある。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、仮に4回目の宣言発令なら「1~3月期、4~6月期に続き、7~9月期もマイナス成長になる可能性がある」と指摘する。

 ワクチン接種が先行する米国は消費の主役が巣ごもり消費から外出を伴うサービス消費に移りつつあり、日本国内の景気もワクチンの普及速度が左右する。政府は接種の加速に尽力することはもちろんだが、回復が遅れる外食など一部分野の下支えや、東京五輪に前後した感染再拡大のリスクにも目配りが必要になりそうだ。(田辺裕晶)

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