国内

マグロ漁獲枠2割増を提案 7月の国際会議は難航か

 日本近海で水揚げされ、「本マグロ」の別名でも親しまれる太平洋クロマグロについて、政府は7月に開かれる2022(令和4)年の漁獲枠を協議する国際会議に、「前年比20%増」の増枠を提案した。厳しい漁獲管理によって資源回復が進んだためで、漁獲枠拡大を求めるのは4年連続だ。ただ、漁業者の増枠要望が高まる中、過去3年は資源保護の観点から実現には至らず、新型コロナウイルス禍による非対面での協議は難航しそうだ。

 太平洋クロマグロの漁獲枠は重量30キログラム以上の「大型魚」とそれより小さい「小型魚」に分けて管理しており、国際的な資源管理は太平洋を東西で二分する形で2つの委員会が担っている。7月27~29日(日本時間)に行う国際会議は、西側の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会と、東側の全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の合同作業部会。日本のほか、米中韓、台湾、カナダなどが参加し、増枠の是非を議論する。合意は全会一致のコンセンサス方式が採用されている。

 太平洋クロマグロの漁を行う主な国・地域は日本、台湾や韓国、米国とメキシコで、最大消費国は日本だ。乱獲などで激減し、指標となる親魚の資源量は1961年の15・6万トンから2010年には1・1万トンにまで減った。WCPFCは資源回復目標を定め、15年に漁獲規制を導入。日本は小型魚で02~04年平均漁獲量比50%の4007トン、大型魚も据え置きの4882トンとなった。

 今回、日本が増枠を提案するのは科学的根拠に基づくものだ。親魚資源量は18年には約2・8万トンと、暫定目標の「24年までに約4万トン」に向けて緩やかに回復が続くことや、最大20%の増枠をしても暫定目標の達成確率が高いとの資源評価が出ている。水産庁が今月18日開いた漁業関係者向け説明会では、「(18年から)連続で増枠できないとの結果は決して受け入れられるものではない」とか「増枠を強くお願いしたい」との要望も相次いだ。

 とはいえ、同じ資源評価を根拠に20%増枠を求めた昨年の会議では、「回復具合を見極めるべき」とする米国の反対や、新型コロナ禍での初のオンライン開催に「実質交渉は困難」とする参加国も出て、増枠は見送られた。今年もオンライン開催で「(昨年の経験で)各国が慣れてきた」(担当者)というが、非対面の状況にあるだけに、厳しい交渉になりそうだ。(日野稚子)

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