海外情勢

「日本より深刻な超高齢社会へ」中国経済に迫る“一人っ子政策”の深刻なツケ (1/3ページ)

 中国政府は5月31日、産児制限を緩和し、夫婦1組につき3人までの出産を認める方針を示した。ジャーナリストの高口康太さんは「中国の少子化は日本よりも深刻。2020年における合計特殊出生率は日本が1.37なのに対し、中国は1.3と日本を下回っている。いまさら産児制限を撤廃しても、出生率が回復することはないだろう」という--。

 ■「一人っ子政策」の方針転換を迫られる中国

 「近年、高齢化がさらに深刻化している。出生政策のさらなる改善を進め、それぞれの夫婦に3人目の出産を認める政策と関連支援策を実施する。これらの政策は、中国の人口構造の改善、人口高齢化に着実に対応する国家戦略、そして人的資源という天賦の優位を保持するために有利に働くものとなる」

 中国共産党中央政治局は2020年5月31日、「出生計画の改善と人口の長期的な均衡ある発展に関する決定」(以下、「決定」)を決議した。冒頭の文章はその一節だ。

 中国がいわゆる「一人っ子政策」から方針を転換したのは2013年のこと、両親のどちらかが一人っ子の場合には二人目出産が認められるようになった。その3年後には全夫婦に対し二人目出産を解禁。そして、今回の三人目出産の全面解禁へと、この8年で規制は次々と緩和されている。

 段階的な制度変更は効果を確かめながらの慎重な態度と言うよりも、計画生育(出産抑制政策)を全面撤廃するふんぎりがつかず、ずるずるとひきずったと見るべきだろう。

 ■出生率は日本以下の水準に

 2020年における中国の合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は1.3と、日本の1.37を下回る危機的な水準にまで落ち込んでいる。本来ならば全般的な少子化対策に踏み切ってしかるべきだ。

 「決定」では教育費や住宅費に対する配慮から若者の恋愛観、結婚観の誘導(従来は若い間は恋愛などせず勉学にいそしめというのが社会の風潮だったが、今後は習近平総書記の号令の下、恋愛バンザイへと変わるのだろうか?!)まで、広範な分野で少子化対策に取り組むとの内容が盛り込まれているが、それでも夫婦1組あたり3人までという形で、出産数制限そのものを撤廃するにはいたっていない。

 現実問題として3人も子どもを作りたいと考えている中国人はほとんどいない。出産数制限を3人にしようが4人にしようが、あるいは撤廃しようが、たいした違いはない。

 それにもかかわらず、出産数制限という制度そのものを維持したことは、中国が抱える病巣の深刻さの表れだ。なぜ、中国は出産抑制政策を始めたのか、なぜ少子化が深刻になってもやめられないのか。その理由を知るためには歴史をひもとく必要がある。

 ■世界的なトレンドだった「人口抑制策」

 悪名高き「一人っ子政策」だが、その起源には長い歴史がある。

 イギリスの経済学者トマス・ロバート・マルサスが1798年に出版した『人口論』において、指数関数的に増加する人口に対し食糧生産の増加ペースは追いつかないため、人口を抑制しないかぎり貧困が拡大するとの考えを示した。この主張は後に優生学につながるなど、長年にわたり大きな影響をもたらした。

 特に第2次世界大戦後には、途上国での貧困拡大は社会主義化につながるとの懸念が広がり、1960年代に入ると人口抑制策は具体的なアクションとして実行されていく。

 米国が経口避妊薬や避妊リング、避妊薬を援助物資として途上国に提供する。世界銀行は貸付の条件として不妊手術の実施を求めた。今となってはおよそ信じがたいような話が現実に存在していたのだった。

 中国もまた、こうした世界的なトレンドの影響を受けていた。1949年の中華人民共和国建国当時に5億4167万人だった人口は、55年に6億人、65年に7億人、70年に8億人、74年に9億人と、増加ペースを速めていく。

 人は国力だとして人口増に肯定的だった毛沢東も考えを変え、1970年から始まる第4期5カ年計画には「一人は少なすぎる、二人がちょうどいい、三人は多すぎる」というスローガンが採用された。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus