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韓国の慰安婦運動30年 抗議主導団体が語る内幕「実態は調整役にすぎない」

 【ソウル=時吉達也】韓国の元慰安婦が公の場で初めて証言してから、14日で30年を迎える。支援団体による強硬な抗議を受け韓国政府が国家間合意を事実上ほごにするなど問題解決の見通しが立たない中、抗議活動を主導する「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)の李娜栄(イ・ナヨン)理事長が産経新聞の取材に応じ、「われわれの実態はただの調整役にすぎない」と主張。当事者の利害が交錯する活動の内幕を明かした。

 寄付金流用、補助金の不正受給…。尹美香(ユン・ミヒャン)前代表が昨年、詐欺や業務上横領などで起訴されるに至った一連のスキャンダルについて尋ねると、李氏は「あくまでも前代表の問題」と距離を置く姿勢を示しつつ、「発覚以前からリスクを把握していた」と明かした。

 研究者として正義連の活動に携わるようになった李氏が初めて事務所を訪れた2000年代初頭、職員は尹前代表を含め4人ほどしかいなかった。李氏は「少人数で膨大な業務を担い、会計上のミスが生じる危険があった」と振り返る。

 正義連は1992年以降、毎週日本大使館前で集会を開催し、通算千回を迎えた2011年には付近の歩道に慰安婦像を設置した。抗議活動での存在感はさらに高まり、同種の像が国内外で乱立し外交問題に発展する端緒を開いた。

 しかし、李氏は正義連の活動が誇大化して報じられていると強調。「われわれが建立したのは韓国国内では日本大使館前の1体だけで、他は一切関与していない。海外でも、事情に応じて一部を支援する程度だ」と釈明する。

 集会開催についても、毎回異なる団体が主管し、正義連は「調整役を務めているのにすぎない」と主張。各回で声明を発表する親北朝鮮団体や宗教団体の主張はそれぞれ大きく異なり、「時には過激な内容が、正義連の主張であるように報じられた」と困惑を隠さない。

 「最終的かつ不可逆的」な解決をうたった2015年の日韓合意当時、急増する抗議団体の調整に追われ、尹前代表は理事会で「(代表を)やめたい」と繰り返していたという。

 慰安婦問題をめぐっては「20万人の強制連行」など、実態とかけ離れた報道が先行し、韓国側が主張する旧日本軍の関与を追認する「河野談話」も発表された。民間の寄付に基づく元慰安婦への現金支給も実施されたが、支援団体側は「日本が法的責任を認めていない」と一貫し和解を認めない姿勢を示してきた。

 しかし、李氏の言葉からは「法的責任」に固執する活動への迷いも垣間見える。15年の日韓合意後の追加要求に応じない日本の政治家らを「ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を『解決済み』という人はいない」などと非難する立場に変わりはない。ただ、問題解決に向けては「正直に言えば、誠意ある謝罪が法的賠償以上に重要ではないか」とも漏らす。理事長交代後、正義連の活動の重点を慰安婦問題から「より普遍的な『女性・人権・平和』の活動」に移行したことも明らかにした。

 昨年以降、関連団体や研究者との間で日本政府への要求事項を一本化するための非公開の議論を開始したという李氏。「論点が整理されつつある」と強調するが、「問題意識がそれぞれ大きく異なる」ため、議論がまとまるメドは立っていないという。

 各自の思惑が交錯する支援団体側に主導権を握られ、韓国政府も外交解決に踏み出せない。問題解決に向けた議論は、出口が見えないまま31年目に突入する。

 李娜栄・正義連理事長のインタビューでの発言について、西岡力・麗澤大学客員教授は次のように語った。

 「慰安婦問題をホロコーストと比較すること自体が話にならないし、国家と国家が約束を守ることの重要性について考慮していないこともよく伝わってくる。日本政府に何を求めるのかは、当事者のおばあさんたちを無視して運動家が勝手に決めることでなく、日本側が対応すべき相手ではない。また、前代表の在職中の犯罪を組織と無関係であると強調するのは無責任極まりない。いったん解散し、蓄財を返還した上で出直すべきだろう」

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