海外情勢

タリバン「イスラム法」採用どこまで 欧米と火種、身体刑や不透明裁判に批判

 アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが権力を掌握した。今後「数週間以内」に新政権の枠組みが示される見通しだが、タリバンと政教分離や民主主義に基盤を置く欧米は対立の火種を抱えており、国際社会による新政権承認には壁がある。タリバンが「シャリーア」(イスラム法)に基づく新体制をしき、民主主義的なシステムはなくなると明言しているためで、これはアッラー(神)の教えに基づくイスラム法を至高のものとし、他の価値観を認めない姿勢といえる。(カイロ 佐藤貴生)

 イスラム法は神の啓示を収めた聖典コーランと、預言者ムハンマドの言行録(ハディース)などを根拠に蓄積された法解釈の集成だ。礼拝や巡礼などの宗教儀礼に始まり結婚や離婚、遺産相続、商行為などの民法のほか刑法にも及ぶ。

 コーランは第5章で、窃盗犯は手を切り落とすと規定。殺人や強盗を犯した者は死刑や磔(はりつけ)に処すると解される一文もある。結婚相手以外との性交渉にはむち打ち(第24章)や石打ちの刑を規定し、第4章では男性を優位に置いて女性は従順であるべきだと説いている。

 タリバンは1994年の発足以後、婚外交渉を持つなどした女性らの罪状を公衆の面前で読み上げ、射殺したり投石を浴びせて殺害したりしてきた。公平で透明性ある裁判が行われていないとして、欧米では女性の人権侵害と合わせて批判の的になってきた。

 タリバンの報道官はかつて、「イスラム教を知る者は石打ちの刑がコーランに書かれており、それがイスラム法であることを知っている」「残酷だという者もいるが、彼ら(犯罪者)は預言者を侮辱したのだ」と述べて正当化した(英BBC放送)。

 イスラム諸国には個別の法律があり、イスラム法の解釈や適用は国によって大きな差がある。体に苦痛や損傷を与える「身体刑」の公表は減少傾向にある。

 教義に厳格なワッハーブ派を奉じるスンニ派大国サウジアラビアは昨年、身体刑の一部廃止を表明。シーア派の政教一致国家イランでも「公開処刑が行われたというニュースはここ数年、聞かない」(首都テヘランの30代男性)という。国内外の批判を考慮しているとみられ、タリバンが身体刑を公に行えば国際社会の非難が集中することは必至だ。

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