オプジーボ訴訟詳報(2)

本庶氏「小野薬品は『何かしてくれ』ばかり」

 《がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり、ノーベル医学・生理学賞受賞者の本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、小野薬品工業(大阪市)を相手取り約262億円の支払いを求めた訴訟は2日午後、大阪地裁で本庶氏の本人尋問が始まった。小野薬品などが米製薬大手メルクに対して起こした特許権侵害訴訟への協力について、本庶氏の弁護人からの質問が続いた》

 --(メルク訴訟について)協力しないという選択肢はあったのか

 本庶氏「私は一研究者としてがんを救うことができればよく、特許を持たないことも検討していた。でも将来、京大の若い研究者が育つには資財を獲得することが必要だった」

 --特許を今後の研究に役立ててほしかった

 本庶氏「特許を得るには仕事は膨大になる。それを考えれば、小野薬品と条件闘争をしたい。特許を守ることは私や大学、小野薬品にもメリットがあり、それに見合うだけのものが欲しかった」

 《話題はメルク訴訟への協力に絡む条件の中身へと移っていく。弁護人は、本庶氏が当時手帳に残していたメモを示しながら質問。証言台の椅子の背もたれに寄りかかっていた本庶氏は背筋を伸ばし、時折上を向いて記憶を思い起こしながら、返答した》

 --平成26年に何通もの書面で(小野薬品から訴訟への)協力を求められていたが、応じていなかった

 本庶氏「小野薬品からは『何かをしてくれ』とばかりで、私が義務を負っているかのようで誠意がなく、放っておいた方がいいと考えた」

 --この年の9月29日に小野薬品の相良暁(さがら・ぎょう)社長と面談をされている

 本庶氏「相良氏には携帯電話で『そろそろトップ会談で解決したい』と伝えていた。訴訟問題が中心ではあるが、正当な報酬も議論したかった。そこでは(メルク訴訟への協力の対価として、小野薬品が受け取る和解金の)40%を渡すという思い切った提案があった。トップにしかできない、社長権限をもった数字だと理解した」

 --小野薬品側は40%の提案について、(発売を開始したばかりの)オプジーボのプロモーション活動などへ協力してもらうという条件付きだった、と主張している

 本庶氏「そういうことではなく、とにかく訴訟に協力してほしいということだった。その見返りに、40%の新たな提案があった」

 --(「第三者から特許使用料を得た場合は1%の対価を支払う」とした)平成18年の契約に基づくという話はあったか

 本庶氏「なかった。新たな提案については、(同時に特許使用料の引き上げも提案されたが)このような条件は(国際的に低いレベルなので)協力しかねると答えた」

 《小野薬品側の対応や提案に不満を隠さない本庶氏。尋問はこの後、さらにヒートアップしていく》

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