国内

大阪の金融都市戦略骨子 具体策乏しく出遅れ

 官民による「国際金融都市OSAKA推進委員会」が9日に正式発表した戦略骨子で、大阪の目指す都市像や重点取り組みが示された。ただ、推進委トップを務める関西経済連合会、松本正義会長が「オールラウンド」というように総花的で、今後、実現へ具体的にどう取り組むかが課題となる。ライバルの東京、福岡はすでに海外企業を誘致する「実績」を積み上げる中、大阪は遅れが顕著となっている。

 骨子は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」達成につながる社債発行▽スタートアップへの投資促進支援▽デジタル証券「セキュリティートークン」を使った資金調達の促進-など、幅広い取り組みを列挙した。これまで強調してきたデリバティブ(金融派生商品)も「先駆的な商品群の展開」が言及された。

 ただ、こうした取り組みを具体化する施策をどうするか、提示するにはいたっていない。「年度末に向けて専門家の意見も聞いて肉付けしていきたい」(吉村洋文大阪府知事)考えだが、残された時間は半年ほど。参画する金融機関の関係者が「本当に間に合うのか」と不安視するように、議論の遅さが懸念される。

 東京都はすでに平成29年に構想を打ち出し、これまでに金融系の海外企業約50社を誘致。脱炭素社会実現での資金調達「グリーンファイナンス」を柱の1つにする構想改定案の議論が進む。福岡も資産運用会社など3社を誘致し、着々と実績を積み上げる。名乗りを上げる3都市では大阪だけが、こうした具体的な動きが取れていない状況だ。

 総会では「できることから進めるべき」という意見が相次いだ。関西経済同友会の古市健代表幹事はデリバティブ市場での先進的な商品を例に「トライアンドエラーで早めに世界の投資家に提示していくことからスタートしたらいい」と主張した。

 その一方、推進委の30を超える参加企業、団体間で構想実現に向けた温度差があり、「全員が同じ船に乗っているのかよく分からない」(関係者)ともいわれる。実際に何から取り組むのか、意見集約は時間がかかりそうだ。

 菅義偉首相の退任が決まり、構想を掲げてきた政府方針の変更へ懸念もある。松本氏は「心配していない」と強調したが、「首相が変われば構想の推進自体どうなるか分からない」(大手行関係者)との声は少なくない。(岡本祐大)

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