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「20代30代が逃げていく」観光都市世界一・京都が陥った“破産危機”の真実 (2/2ページ)

 ■街のあちこちで起こった「異変」

 しかし、その頃すでに街のあちこちで京都を蝕(むしば)む異変が起きていた。

 中心市街地のワンルームマンションのオーナーは住人に立ち退きを迫り、簡易宿所へ用途変更した。また、東山の八坂神社そばの30坪の京町屋は3000万円で売却されたあと、転売を繰り返し、最終的に1億2000万円で売却された。住居に比べてはるかに高利回りな宿泊施設経営に莫大な「投機マネー」が流れ込んでいったのである。

 一方で、街中の住宅供給は極端に低下した。2017年マンション供給は前年の3分の1に落ち込み、中京区では例年300~600戸で推移していた供給量は41戸にまで落ち込んだ。需給バランスの歪みにより、供給される希少なマンションは一般人が買える値段ではなくなっていった。

 一方、「お宿バブル」で増加したホテルの稼働率は2015年の89%をピークに下がり続けていた。コロナ禍に見舞われた2020年4月は5%、2021年4月は20%だ。

 ■30代の流出が都市を弱体化させていく

 その頃から京都市の人口動態にも異変が生じてきた。京都府下との転入転出の数値が、2016年を境に転入超過から転出超過に転じたのである。当時市議だった私は“異常な事態”を前に、「これはベネチアやバルセロナで起きている観光公害と酷似している」と危機感を覚えた。

 そこで2017年、まだ客室数4万室の目標を達成していない時期ではあったが、議会で市長に「ホテル充足宣言」をするよう迫った。しかし市長の答えは、「まだホテルは足りない」というもので、2019年5月に「ホテル充足宣言」が発せられるまで事態は悪化の一途をたどった。

 ホテルが住民を駆逐するという観光公害の代表的事象が、この京都でも進んだ。

 京都市の人口動態には特徴がある。20代と30代という若者の転出超過が止まらないのだ。20代は大学を卒業して就職で東京、大阪へ流出する。30代は住宅価格が高いため、周辺都市へ流出する。

 20代の流出については、人口の1割を大学生が占める京都独特の特徴であるため、一定数はやむを得ない面もある。しかし、30代の流出は、少子化をさらに進行させ、納税義務者を失うことで税収にも悪影響は必至。さらに、街そのものが活力を失うという「三重苦」に見舞われる。

 この30代の流出問題は、人口減少の中で最も深刻な課題のひとつとされている。そこで、各自治体は積極的な誘致に動いている。ところが京都市では、「流動人口8人で定住人口1人分の消費に匹敵する」と豪語し、観光優先の政策を改めようとしなかった。

 その結果、周辺の長岡京市、向日市は全国屈指の人口増加を達成する一方で、京都市は2020年に人口減少数で日本一という自治体に成り下がってしまったのだ。

 ■「強み」を生かせるか

 京都は、このまま沈みゆくのだろうか?

 復活の芽がないわけではない。財政再建についていえば、やりきるには相当の返り血を浴びるトップの覚悟が必要だが、他都市並みの水準まで人件費やサービスレベルを引き下げれば、実はある程度めどが立つ。人口減少対策は、地価を安定させることが求められるが、定住促進戦略でいえば、京都は他都市に比べて優位なポジションにある。

 転勤などを除き、人は知らない都市、訪れたことのない都市に引っ越したりはしない。そのため、全国の自治体が進める定住促進対策は、まずは知ってもらい、その町のファンを増やそうと「まず一度わが町を訪れてください」となる。流動人口(来訪者)や応援人口を増やすというのが基本戦略なのだ。

 その点、京都市の場合は恵まれている。

 京都を知らない人はまずいない。そして、多くの日本人が訪れたことがあり、京都の持つブランド力に憧れを持つ方も多い。意外に語られないが、観光は定住促進の突破口にもなるわけだ。

 こうした素地を生かし、定住促進政策を積極的に展開すれば、他都市に比べ優位に進められることは間違いない。

 ■過去の遺産に胡坐をかいた結果…

 政令指定都市の中では沈下傾向にあるとはいえ、任天堂や京セラ、日本電産などに代表されるように、日本有数の企業も多く、恵まれた条件がそろっている。歴史都市・京都の観光資源もブランド力も健在だ。これらのことを考慮すれば、復活に必要な素材は十分すぎるほどある。本来ならば。

 ところが、京都では「過去の遺産に胡坐(あぐら)をかいてきた」という街の声を聞くことが多い。まさしく、これが京都市凋落(ちょうらく)の真因といえるかもしれない。

 財務処理手法の問題、過剰投資、人口減などの社会変化に対応できず、かつて夕張市は破綻した。すべては当時の政治判断の誤りによるものだった。現在の京都市は、夕張破綻から何も学んでいないと言うほかない。

 しかし、政治判断のミスで追い詰められたこの状況を乗り越えるのも、また政治判断でしかない。トップのリーダーシップが強く問われている。

 

 村山 祥栄(むらやま・しょうえい)

 前京都市議会議員

 1978年、京都府に生まれる。15歳のとき、政治に命をかけず保身に走る政治家の姿に憤りを覚え、政治家を志す。衆議院議員秘書、リクルート(現リクルートホールディングス)勤務を経て、25歳の最年少で京都市議に初当選。唯一の無所属議員として、同和問題をはじめ京都のタブーに切り込む。変わらない市政を前に義憤に駆られ、市議を辞職。30歳で市長選へ挑戦するも惜敗。大学講師など浪人時代を経て、地域政党・京都党結党。党代表を経て、2020年に再び市長選へ挑むも敗れる。主な著書には『京都・同和「裏」行政』『地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体』(以上、講談社+α新書)、『京都が観光で滅びる日』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

 

 (前京都市議会議員 村山 祥栄)(PRESIDENT Online)

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