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「受信料のためなら手段を選ばない」NHKが採用した未納者を狙い撃つ“ある奇策” (1/2ページ)

 ■受取人不詳でも届く「奇策」が考案された

 「特別あて所配達郵便」ということばを聞いたことがあるだろうか。

 住所を書くだけで郵便物を届けてくれる、通称「宛名なし郵便」と呼ばれるもので、日本郵便が6月からスタートした、いささかいわくつきの特例サービスである。

 宛名を書かなくても配達するということは、受取人が誰だかわからなくても、住所又は居所が存在すれば配達されるということになる。

 どんな場面で利用されるのか、すぐにピンとくる人はまずいないだろうが、サービス開始とともに、さっそく手を挙げたのがNHKだ。

 NHKの受信料は、世帯ごとに徴収するので、未契約世帯には受信契約の案内や請求書が届きさえすればよく、世帯の中での受取人を特定する必要がない。

 誰が住んでいるか特定しにくい都市部のマンションや集合住宅でも、未納者の居所さえわかれば受信契約を迫れるが、宛名まで書かなければならない郵便は利用できず、悩みのタネだった。加えて、コロナ禍で直接訪問による営業も難しくなり、NHKは受信料の確保に危機感を募らせていた。

 一方、日本郵便も、やはりコロナ禍で業績が低迷、新たな収入源を模索していた。

 そこに、総務省の後押しもあって、日本郵便とNHKの思惑が合致した「奇策」が生まれたのである。

 ■郵便サービスのコペルニクス的転回

 通常の郵便物は、受取人の住所と宛名が書いてなければ差出人に返送されるが、「特別あて所配達郵便」は住所さえ書いてあれば、宛名がなくても返送せずに郵便受けに入れてくる。

 利用するためには年間1000通以上差し出すことなどが条件とされているうえ、1通あたり200円の特別料金がかかる。定形郵便物の封書(25グラム以内)は通常料金84円に加算されて284円、はがきなら63円+200円で263円と、かなり割高だ。

 従来の郵便配達に比べるとコペルニクス的転回ともいえる新サービスだけに、日本郵便は、6月21日の開始から1年間試行し、様子を見て本格サービスに移行するという。

 もっとも、利用条件をみれば、一般の人が利用することはほとんど想定されず、企業もダイレクトメール(DM)で使うにはコストがかかりすぎるため二の足を踏みそうだ。市場調査などでの活用は想定されるが費用対効果は微妙で、利用者の広がりは限定されるとみられる。

 新サービスの試行開始から2カ月余。NHKは、広報の回答によると、9月初めの時点で「一部地域で、すでに試験的に利用を始めている」ということで、早々に取り組んでいるようだ。

 一方、日本郵便は「サービスは開始しているが、差出人は個人情報になるので、差し控えたい」と控えめで、NHKのほかには目立った利用企業の話も聞こえてこない。

 テレビ離れや受信料の引き下げ圧力が強まる中、受信料確保のためなら「何でもあり」という貪欲なまでのNHKの前のめりの姿勢だけがクローズアップされている。

 ■きっかけは武田総務相の一声

 新サービスが生まれたきっかけは、武田良太総務相が唱えたNHKの受信料徴収と日本郵便のネットワークの連携。総務省が所管するNHKと日本郵便の間で「何か協力することができないか」との一声から始まった。

 武田総務相は2020年12月21日の記者会見で、受信料徴収の営業経費が700億円超にも膨らんでいることを問題視し、「2万4000局の郵便局のノウハウや力を受信料の徴収に活かすことができないか、実務者同士で研究してもらっている」と、自らが新サービスの仕掛け人であることを明かした。

 妙案が見つかれば、NHKの膨大な営業経費を抑えられる一方、低迷する日本郵便の業績を押し上げられるという一石二鳥のグッドアイデアというわけだ。

 そして、日本郵便が5月28日に試行を発表したのが「特別あて所配達郵便」である。

 ■総務相が手放しで喜んだサービス試行

 武田総務相はすぐさま、「NHKと日本郵便双方にとってプラスの効果をもたらすことを期待したい」と、手放しで喜んだ。

 これを受けて、NHKの前田晃伸会長は6月3日の記者会見で「利用したい」と明言。

 「費用対効果を検証して、訪問によらない営業活動の一部にあてたい」「今までのように、ものすごい数の文書を(受信契約のない世帯に)限りなく配る方式から、精度が高いものにしたい」と、コスト削減への期待感を示した。

 もっとも、いきなり受信料の請求書を送りつけるのではなく、NHKが提供しているサービスの案内から始め、次いで受信契約の方法を説明し、その後に受信契約につなげられるよう、数段構えで臨むという。

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