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「取りやすいところから徹底的に」たばこの次に増税が狙われる“ある嗜好品” (1/2ページ)

 今年10月1日からたばこの販売価格がまた上がった。たばこ税は一体どこまで上がるのか。早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉さんは「たばこ税の税率は『2兆円』という税収ありきで決められている。たばこ離れが進むほど、税率も上がるだろう。税収を確保するため、たばこ以外の嗜好品も課税対象になる恐れがある」という――。

 ■1年ぶり6度目のたばこ税増税

 2021年10月1日から、たばこ税増税により販売価格が引き上げられます。2003年から2020年まで計5回の増税を重ね、値上げは昨年10月以来1年ぶりです。

 代表的な紙巻たばこの改定価格は、JT(日本たばこ産業)の「メビウス」(20本入り)が現行の540円から580円に、セブンスターは560円から600円と、いよいよ大台に乗ってきました。銘柄によっては、最近まで400円台だったものが600円台になったものもあり、愛煙家の負担は小さくありません。

 実際、喫煙者は年々減少を続けています。紙巻きたばこの販売数量は、1996(平成8)年度の3483億本をピークに年々減少し、2020(令和2)年度では988億本とピーク時の3割以下にまで落ち込んでいます。

 ■税収は必ず「2兆円」になる仕組みになっている

 では、この間のたばこ販売による税収の推移はどうなっているのでしょうか? 驚くべきことに、1990年代から現在に至るまで、2兆円を超える水準でほぼ横ばい状態を保ってきています。2018年度は2兆円を割っていますが、今回のたばこ税増税は安定して2兆円台をキープさせることを狙って行われるものと思われます。

 つまり、たばこ税の税率は「税収ありき」で決められているのです。「毎年約2兆円という財源を確保する」ことを目的として、たばこの販売量が減少するたびに税率を上げてきているわけです。

 たばこには依存性があるため、増税によって価格が高くなっても一定数の人は定期的な購入を続けるでしょう。そのため、税収は安定的に確保できます。喫煙者は、世の中の嫌煙ムードの高まりによって声を上げにくい立場に置かれています。また、値上げによって喫煙者が少なくなれば増税に反対する人も少なくなりますから、たばこ税は増税しやすいという事情があるのです。つまり「取りやすいところから取る」。これが現在のたばこ増税の実態なのです。

 現在の財務省の至上命令は「社会保障費の削減」です。1990年度に11兆6000億円だった社会保障費は、2021年度には35兆8000億円と11年で3倍以上に膨れ上がっています。今後はさらに高齢化が進展し、2022年にはいわゆる「団塊の世代」が後期高齢者である75歳以上にさしかかります。75歳以上になると1人当たりの医療・介護にかかる費用は急増することから、社会保障費の削減は急務なのです。

 ■健康と経済のバランスを取る「ハームリダクション」

 たばこ増税の是非をめぐる議論のプロセスにおいては、たばこ価格を一気に引き上げることで、「医療費抑制と税収確保の両立」が可能になるという試算も見られました。しかし、大幅な増税は「健康増進のための消費抑制策」としてはあり得るとしても、喫煙者を減らす目的で増税する一方で、その増収分を当てにするのでは筋が通らないという指摘もあります。

 医療費は抑制したいが、2兆円の安定税収はキープしたい……この矛盾を解消する考え方があります。それが「ハームリダクション」です。

 「ハームリダクション(Harm Reduction=被害の低減)」とは、健康上好ましくない行動習慣を持っている人が、そうした行動をただちにやめることができない場合に、その行動に伴う害や危険をできるかぎり少なくすることを目指すものです。

 ここで言う行動習慣には、薬物やアルコールなどの依存も含まれますが、たばこで言えば「紙巻たばこ」から「加熱式たばこ」への移行がそれにあたります。

 加熱式たばこの健康への影響については、まだ明らかになっていませんが、喫煙者の健康被害軽減だけでなく、周囲の非喫煙者が被る受動喫煙による健康への影響を軽減する可能性があるからです。

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