株価・外為

「悪い円安」加速 企業物価上昇で景気回復に冷や水

 15日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=114円台を付け、平成30年11月以来、約2年11カ月ぶりの円安ドル高水準となった。米国の長期金利が高い水準で推移し、日米の金利差拡大を意識した円売りドル買いが活発化した。円安は輸出企業の業績拡大に寄与するが、半導体不足で輸出が滞る中での恩恵は限定的。逆に物価の上昇圧力が強まることで、新型コロナウイルス禍からの景気回復を遅らせる懸念もある。

 外国為替市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が年内にも段階的な量的緩和の縮小を開始するとの見方に加え、資源価格高騰によるインフレ懸念から2022年中にも利上げに踏み切るとの見方が強まった。米金利の上昇による日米金利差の拡大を見込み、有利なドル建てで資産を運用する流れが円を売ってドルを買う動きにつながった。

 本来、円安は自動車など輸出企業の収益拡大を通じ日本経済にプラスになることが多い。だが、15日にはトヨタ自動車が半導体不足などを理由に11月の生産計画から15%程度減らすと発表するなど減産が深刻化。当然、輸出台数も減らしており、期待された円安の恩恵を受けられない状況に陥っている。

 また、通常なら円安は日本国内での買い物が安くなることで訪日外国人客の増加につながるが、コロナ禍で入国制限が長期化した現状では「受けられる恩恵はゼロ」(旅行会社)だ。

 一方、円安のデメリットも拡大している。最大の懸念材料は、円安と同時進行している原油価格の上昇だ。15日の東京原油市場では、欧州の原油需要の高まりなどで先物価格が1キロリットル当たり5万6千円を超え、年初来の高値を更新し3年ぶりの高水準。ガソリンや灯油、石油化学製品といった関連製品の原材料コストが高まり、暖房需要が高まる冬に向け家計負担が重くなる。

 楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストは「円安と原油高は輸入コストの上昇につながりやすく、資源に乏しい日本の購買力や企業業績に影響を与える“悪い円安”になる可能性が高い」と指摘。コロナ禍による所得の低迷と値上げが重なれば、消費減退が国内経済の低迷につながる恐れもあると懸念する。

(西村利也)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus