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衆院解散、短期決戦「時間ない」 公務・応援で地元帰れず

 14日の衆院解散を受け、事実上の選挙戦の火ぶたが切られた。新型コロナウイルス禍を象徴するように、ワクチン関連の公務に追われる人、早々に国会を後にする人。解散から31日の投開票日まで17日間という「戦後最短」の決戦に向け、握手ではなく拳を合わせる「グータッチ」で再会を誓い合い、それぞれの現場へと散っていった。

 公務を優先

 「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」。午後1時すぎ、大島理森(ただもり)議長が解散詔書を読み上げると、慣例の万歳三唱と拍手が湧き起こり、衆院本会議場は熱気に包まれた。

 同僚へのあいさつもほどほどに、自民党の堀内詔子(のりこ)ワクチン担当相(55)=山梨2区=は足早に車に乗り込み、直後に予定されていたワクチン施策などにかかわる各省庁担当者らとの打ち合わせに向かった。

 平成29年の前回の衆院選は、わずか3000票差で勝利する激戦。支持拡大のため土日などを活用し、できる限り地元に足を運んできたが、初入閣を果たすと立場は一変した。この日も国立感染症研究所(東京都新宿区)への視察など公務がめじろ押し。15日もワクチン接種会場の視察などが入っており、地元入りは遅れそうだ。

 「激戦区で公示まで時間もなく、選挙のことを考えると夜も眠れない。解散当日も地元に入ることをぎりぎりまで模索したが…」。事務所関係者は複雑な心境をにじませつつ「大臣として今は本当に大事なとき。最終的に公務を優先するのは当然のこと」と、前を向いた。

 同じく初入閣した自民党の小林鷹之経済安保担当相(46)=千葉2区=も、取材や大臣としての公務が立て続けに入り、解散当日の地元入りは断念。 「今までの選挙では解散直後に地元に入って活動していたが、今回は大臣として迎える選挙。職責をしっかり果たし、期待に応える」と話した。

 選挙を見据え作成に取り掛かっていたポスターや看板のデザインは、4日の入閣を受けて急遽変更することに。ポスターの肩書変更などの作業に追われている事務所関係者は「本当に時間がないが、何とか間に合いそうだ」と慌ただしく語った。

 一方、緊急事態宣言が東京都に発令されていた今年1月、深夜に銀座のクラブを訪れ、自民党を離党し無所属となった松本純氏(71)=神奈川1区=は、関係者によると解散後、地元の横浜市内に戻った。この日は辻立ちは行わず関係者を回ったという。

 地元入りできず

 党の「顔」となるため、地元入り自体が難しい人もいる。

 自民党総裁選への出馬で存在感を高め、9選を目指す高市早苗政調会長(60)=奈良2区=は、地元入りできる日は「選挙期間中、1回程度かも」(陣営幹部)。遊説で全国を飛び回る予定で、地元事務所によると、すでに約30人から応援演説の要請が来ているという。

 公示日の19日も奈良入りは微妙といい、陣営側は本人のメッセージや訴えを動画に収録、地元事務所で流す予定にしている。期間中は会員制交流サイト(SNS)を活用し、広く支持を訴える戦略だ。

 岸田文雄首相(64)=広島1区=も、現時点で地元入りの予定はないという。選対本部長を務める広島県議会議長で自民党県連の中本隆志会長代理(63)は「緊張感をもって、今まで以上の票を捻出していかなければいけない」と力を込めた。

 野党も着々

 当選13回のベテラン、立憲民主党の菅直人元首相(75)=東京18区=は衆院本会議場で解散が宣言されると笑みを浮かべ、枝野幸男代表と言葉を交わしてから議場を後にした。

 18区には、旧民主党政権で防衛副大臣などを務めた長島昭久氏(59)が自民党から立候補する。「元同僚が相手なだけに負けられないという思いは菅氏本人が一番強い」(地元市議)という。

 午後6時半、地元のJR東小金井駅(東京都小金井市)で街頭演説に臨み「政権交代が可能なところまでやってきた。ぜひ立憲民主党、野党に投票していただいて、新しい政権を皆さんの手で作っていただきたい」と言葉に力を込めた。

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