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首相肝いり「東京一極」是正 大平元首相の構想継承

 政府の「デジタル田園都市国家構想実現会議」が目指すデジタル化による都市と地方の格差解消は、岸田文雄首相の思い入れの深い政策の一つだ。首相が率いる宏池会(岸田派)出身の大平正芳元首相が提唱した「田園都市構想」が原点にある。一方で、過去の政権の取り組みとの違いが見えづらい面もあり、具体的な成果を打ち出せるかが焦点になる。

 「デジタル技術の活用で地域の個性を生かしながら持続可能な経済社会を実現する」。首相は11日の初会合でこう述べ、年内をめどに施策の全体像を取りまとめる考えを示した。

 「デジタル田園都市国家構想」は第5世代(5G)移動通信システムなどのデジタルインフラを整備し、都市と地方の格差解消を目指すものだ。首相は自民党政調会長時代に、新型コロナウイルス収束後の成長戦略として、この構想をまとめ、昨年と今年の党総裁選や先の衆院選でも公約として訴えた。

 首相が着想を得たのは、宏池会の“中興の祖”とされる大平氏が地域間格差の是正を目的に掲げた「田園都市構想」だ。首相は自著「岸田ビジョン」で「『田園都市構想』を継承し、具体化していかなければならない。それが宏池会会長の私の使命です」と記した。周囲にも「しっかりやるつもりだ」と語る。大平氏は構想の実現を見ることなく急逝したが、近年のデジタル化の進展やコロナ禍は追い風になる。

 安倍晋三、菅義偉両政権も「地方創生」を打ち出し、地方自治体のデジタル化を促す「自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画」などに取り組んできた。ただ、東京一極集中の是正には至っておらず、政府関係者は「地方創生はスタート当初の熱気が薄れており、デジタル田園都市国家構想の議論を進めることで、再び強化、充実できるのではないか」と期待する。

 産業の育成や地方への権限移譲など課題は多い。看板の掛け替えで終わらず、従来の政策を発展させることができるか、首相の本気度が試される。(永原慎吾)

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