海外情勢

国際機関での台湾支持強まる WTO委問題

 国際機関への台湾の参加や地位向上を支持する声が米政界で強まっている。台湾の参加機会拡大を後押しし、台湾へ威圧的な行動を強める中国を牽制(けんせい)する動きだ。これと歩調を合わせ、中国本土からの独立性が揺らぐ香港について、これまで優遇されてきた貿易・金融面の地位を疑問視する見方も強まる。世界貿易機関(WTO)での台湾と香港の対立劇は、そんな潮流に一石を投じている。

 WTOの政府調達委員会で香港が台湾の議長選出を阻止していることに関し、この問題を調査してきた元米ケイトー研究所研究員、レスター氏は「国際社会での台湾の役割増大に異を唱える中国と台湾の争いが、WTOで表面化した一例といえる」と指摘する。

 これまで各種委員会で台湾は何度も議長を務めてきたが、WTOに台湾と同時加盟した中国は阻止してこなかった。今回、阻止の背景に中国の意向が香港を通じて反映されているとすれば、「委員会機能が阻害されてはならない」(日本)と懸念が出るのは当然だ。

 一方、米国務省は先月、国連など国際機関への台湾の参画をめぐり、米台高官協議を開催。米下院の超党派議員が今月、国際通貨基金(IMF)で台湾を正規メンバーと位置づけるよう求める法案を再提出した。

 世界的な課題解決に取り組む国際機関へ、台湾が実効性の高い形で関与すべきだとの求める声は根強い。

 対照的に、中国本土と海外市場との結節点となってきた香港には厳しい目が向けられる。中国政府が統制を強める「香港国家安全維持法」施行後、トランプ前米政権が輸出管理の香港優遇を見直した。バイデン政権も対中投資規制を厳格化し、米中分断を進め、国際金融センターとしての香港の地位に影が差している。

 香港の自治を前提とした「一国二制度」が形骸化して、中国本土との一体化が進んだことは、香港に認められてきた貿易や国際金融面の特別な地位への疑念を膨らませた。WTOなどでの中台の対立にも微妙な影を落としている。

(ワシントン 塩原永久)

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