鳥インフル対策急ぐ日系企業 中国駐在員の帰国準備、製品供給態勢作り

2013.4.20 08:30

 鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)感染が拡大している問題を受け、中国に進出している日系企業が、従業員や家族の安全確保とビジネス安定継続の両面から危機管理を急いでいる。

 中国では、19日までにH7N9型ウイルスへの感染者88人のうち17人の死亡が確認されている。電機大手の担当者は「今後、人から人への感染が確認される事態を想定し、日本人駐在員の家族を一時帰国させるよう航空券確保や日本での受け入れ準備を始めた」と話した。

 ある製造業では、衛生観念の異なる多数の地元従業員に対し、手洗いやうがいの励行、出勤時の体温測定などを指導して感染予防に全力をあげている。

 H7N9型ウイルスは「人への感染では5日程度で重症化するため早期治療が不可欠」(医療関係者)と指摘されている。感染がさらに広がった場合、工場全体やオフィスビルなど一帯が衛生機関などによって封鎖される懸念もある。

 このため、「周辺諸国でバックアップ生産し、顧客に製品を安定供給する態勢作りを急いでいる」(電子部品大手)という。事務所が突然閉鎖される事態を想定、複数の拠点に必要書類を分散した企業もある。

 こうした対応は、災害や紛争など緊急事態に備えた「事業継続計画(BCP)」の一環だが、「昨年来の反日デモ暴徒化、大気汚染の深刻化と続き、さらに今回のH7N9型が猛威を振るえばトリプルパンチとなり、中国からの撤退を最終決断する要因になる」(アパレル大手)との厳しい見方も出ている。

 上海市は約5万6000人と海外で最大の在留邦人を抱える都市。上海の日本総領事館は、東北大大学院医学系研究科の賀来満夫教授を招き、感染状況などについての「講演相談会」を26日に開くことにしている。(上海 河崎真澄)

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