【太陽の昇る国へ】小泉氏訴える「原発即ゼロ」は幻想

2013.11.22 05:00

 □幸福実現党党首・釈量子

 --脱原発を訴える小泉純一郎元首相による会見が波紋を呼んでいます

 もともとは原発推進論者だった小泉氏ですが、8月にフィンランドの高レベル放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を視察し、無害化するまでに10万年以上かかると聞き、原発ゼロしかないと確信を深めたとのことです。

 反原発を掲げる共産党はじめ、野党各党は色めき立っているようですが、本人は新党結成といった展開までは想定していないようです。とはいえ、“政策より政局”の小泉氏だけに、その真意は不明です。

 小泉氏はかつての郵政民営化の成功体験が頭にあるのかもしれませんが、原発容認の立場を守旧派に見立て、「脱原発VS.原発推進」を政治的対立軸として演出しようとの意図があるのだとしたら、とんでもない話です。

 --安倍首相はトルコなどに、原発のトップセールスを展開しています

 これは大いに進めるべきですね。新興国の旺盛なエネルギー需要を賄うには、原発によるエネルギー供給が必要不可欠です。こうしたなか、脱原発により日本から原子力技術が失われれば、その担い手は中国などに移ることになりかねません。中国産の原発で安全性が担保されるか疑問ですし、やはり日本が世界一安全な原発モデルを提供し、指導力を発揮することが世界の要請と考えるべきでしょう。

 --小泉氏が懸念する高レベル放射性廃棄物の最終処分については

 地下300メートル以下に埋設する地層処分が基本方針とされていますが、地域住民の理解を得るのが難しいことから処分場が選定されておらず、これまで“原発は見切り発車”などと非難されてきました。政府は今回の小泉氏の動きをむしろ奇貨とし、処分場の選定を含め、廃棄物処理の仕組みづくりに本腰を入れるべきでしょう。

 わが党としては、使用済み核燃料の減量のためにも、高速増殖炉の実用化も含め、核燃料サイクル政策を維持、推進すべきだと考えます。

 --来年4月から消費税率が上がりますが、原発停止に伴う電気料金値上げもあり、国民負担は増加する一方です

 アベノミクスにより回復途上にあるわが国経済にとって、原発停止は消費増税とともに足かせ以外の何物でもありません。

 現在、火力発電所がフル稼働していますが、これにより追加燃料費として年間3.6兆円もの国富が国外に流出。貿易赤字が定着しています。燃料費がかさめば電気料金にはねかえり、家計の負担は重くなり、企業のコスト競争力は低下します。みなさまの生活や日本経済を守るためには、原発再稼働が急務であることは言うまでもありません。

 --原発再稼働となると、福島の汚染水の問題が取りざたされます

 メディアが放射線の恐怖をあおり立てたことで、被災地の復興自体が遅れている面は見逃せませんね。福島では放射線による犠牲者は1人も出ておらず、原発事故による年間被曝(ひばく)量も発がんリスクが上昇するとされる100ミリシーベルトには及びません。つまり、福島の放射能は健康被害が起きないレベルだと言えますし、問題の汚染水にしても、専門家は海洋汚染、ひいては健康被害をもたらす可能性は考えにくいと指摘しています。

 もちろん新エネルギーの研究開発などは進めるべきですが、国民生活や産業・雇用を守るには、今後も原子力の活用による電力の安定供給は欠かせません。実際、脱原発で再生可能エネルギーへの転換を図るドイツでは、電気料金の高騰を招き、国民負担は増大しています。

 小泉氏は会見で安倍首相に対し、原発ゼロにかじを切るよう要望しましたが、小泉氏の論は、日本経済への影響などは度外視したファンタジーのようなものです。「原発ゼロという方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」という発言に至っては、首相在任中、国民受けするスローガンを示す一方、具体策は担当大臣などに“丸投げ”した小泉政治そのものと言ってよいでしょう。

 しかし、エネルギー政策は国家の根幹にかかわる問題であり、小泉氏の手がけた郵政民営化などよりはるかに重要な事柄です。安倍首相には国の方針を誤ることなく、責任ある判断を強く求めるものです。

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【プロフィル】釈量子

 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。

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