【太陽の昇る国へ】社会主義に“変質”したアベノミクス

2014.2.14 05:00

 □幸福実現党党首・釈量子

 --安倍晋三首相が賃上げを呼び掛けています

 2014年春闘の労使交渉が始まりました。政府自ら賃上げを求めるという異例の要請に対して、業績が好調な大企業を中心に前向きに取り組む動きも見られます。労組側が経営側からベースアップ(ベア)を含む回答を引き出せるかどうかが焦点となっています。

 確かに労働者の平均給与はピーク時の1997年の467万円から、12年には408万円と約60万円も減りました。アベノミクスで上向いた業績を賃上げや設備投資に回し、デフレの脱却と景気の好循環につなげていきたいところです。菅義偉官房長官も5日の記者会見で、同日スタートした春闘について「一時金も望ましいが、それよりもやはりベースアップが望ましい」と述べており、賃金水準を一律に引き上げるベアの必要性を強調します。

 しかし、業種や企業規模、地方によって業績はまちまちであり、政府の一律要求は筋違いです。なにより、4月から消費税率を8%に上げ、さらに来年10月から10%に上げるのを前提にした「賃上げ要請」には、まるで首を絞めながら、それでも笑えと言うような“怖さ”を感じずにはいられません。消費者物価は上昇し、家計の負担が増し、消費が冷え込み、景気の腰が折れたとき、責任を取るのは民間です。

 茂木敏充経済産業相も7日の参院予算委員会で、大手企業の春闘の結果がまとまる3月中旬以降、企業の賃上げ状況を把握し、東証1部企業については企業名も含めて結果を公表するという考えを示しました。政府による圧力に見えなくもなく、政府の口出しは社会主義国のそれに近づいてきたようです。

 賃金は労働の価格でもあります。したがって資本主義の市場経済においては、労働市場の需要と供給によって決まるべきものです。政府が民間経済に介入して、価格の決定に圧力を加えることは、いかなる良心的な動機からであっても経済倫理に外れ、間違った結果をもたらすことを知る必要があります。

 資本主義市場経済の最大のポイントは、各個人や企業の経済的活動がそれぞれ自主的な意思決定に基づいて行われることです。何をどれだけ生産し、消費するかは、国民の自由意思です。

 政府による介入、統制はよほどの市場の失敗がある非常に限られたケースに限定されなければならないはずです。したがって安倍政権の経済政策は、日本を、歴史的にも、理論的にも誤っていることがすでに証明されている社会主義に向かわせようとしているものであると言えるのではないでしょうか。

 --魚の養殖も「減反」するという報道もありました

 政府がブリとカンパチの今年の生産量を12年より1割強少ない計14万トンとする目標を示しました。養殖業の業界団体は今後、この目標に基づいて全国的に生産調整を進めるといいますが、まさかの“減反”政策です。こんなバカな話はありません。

 中国や東南アジア諸国で和食ブームも広がっており、魚のおいしさを理解してもらい、商圏を広げられるよう環境整備をするなど、やれることはあるはずです。今さら農業で失敗した計画経済を漁業にも導入するなど、政策の方向性がちぐはぐで理解に苦しみます。

 --都知事選では舛添要一氏が勝利しました

 2020年オリンピック、パラリンピックに向けて「東京を世界一にする」と訴えている新知事には、力強く東京都から繁栄の実現を図っていただきたいと思います。福祉の面でも、効率的効果的な手を打つことが期待されます。

 今回、原発反対派の知事が当選すれば各地に飛び火する懸念もありましたが、東京というシンボリックな自治体での有権者の判断は、冷静で現実的なものでした。そもそもエネルギー政策は国がやるべき仕事であり、政府は原発を重要なベース電源と位置付け、エネルギー基本計画をしっかりと推進すべきです。

 一内閣で2度の増税に踏み切りつつ、経済成長は果たして可能か。アベノミクスが社会主義に変質しつつある中、個人や企業は、身を引き締めて、自助努力の精神を発揮するべき時期と言えるでしょう。

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【プロフィル】釈量子

 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。

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