中小6割「全て転嫁できる」 97年増税時より円滑、懸念は取引先の“圧力”

2014.3.24 06:01

 ■本紙調査 懸念は取引先の減額要請

 消費税率の引き上げを目前の4月1日に控え、フジサンケイビジネスアイが中小・ベンチャー企業を対象に行った緊急調査によると、増税分を価格に「全て転嫁できる」とした企業が全体の約6割と、1997年の前回増税時よりも円滑に転嫁の準備が進んでいる実態が明らかになった。一方、「一部転嫁する」「全く転嫁できない」も合計で約4割にのぼり、コスト増を嫌う取引先の圧力があることをうかがえる。増税実施から5月にかけ、代金の支払い段階で取引先から減額要請が顕在化する懸念も指摘されており、先行きは予断を許さない面もある。

 調査は12~19日、中小・ベンチャー企業を中心とするイノベーションズアイ会員企業を対象にインターネットを通じて実施し、97社から回答を得た。

 それによると「全て転嫁できる」とした企業は約57%と半数を超え、「一部転嫁」は約25%、「全く転嫁できない」は約18%だった。単純比較はできないものの、日本商工会議所が2011年に行った調査では、前回の消費税増税時(1997年4月)に、売上高が年1億円以下の中小企業の5割以上が、一部またはほとんど転嫁できなかった状況よりも、順調といえる。

 “買いたたき”少ない

 全て転嫁できるとした企業の回答では「周りも転嫁しているから」(ITサービス業)、「国策なので負担をお願いするしかない」(サービス業)といったコメントが寄せられ、転嫁拒否や取引先が値下げを求める“買いたたき”は少ないもようだ。

 実際、内閣府の消費税価格転嫁等相談対応室によると、2月中に受けた相談で転嫁拒否に関するものは全体の4%にとどまった。転嫁拒否を違法行為とした消費税転嫁対策特措法を制定し、中小企業庁に「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」を大量配置して監視を強化するといった政府の取り組みが功を奏した。

 内閣府への相談の大半は総額表示など値付けに関するものが占めている。フジサンケイビジネスアイの調査でも一部の転嫁にとどまったり、転嫁できないとした企業は、飲食店では「飲み物の量は減らせず、税率が10%になれば値上げできる」「100円単位での価格設定なので一部を値上げし、一部は据え置く」という対応をとったり、「コインの枚数を目安に料金を決める業界では難しい」(ゲームセンター経営)などと、増税3%分を価格や料金にいつ、どのように反映させるか苦慮しているケースも少なくない。

 一方で「顧客との付き合いを続けるためには避けられない」(製造業)、「孫請けなので一部しか転嫁できない」(サービス業)といったように、取引先の圧力などを感じて転嫁を見送る事例もあった。

 巧妙な手段に警戒

 中小企業庁の転嫁Gメンが指導した事例では「海外製品と比べたいので(下請け)価格の見積もりは税込みの総額でしてほしい」と暗に値下げを求めたり、「増税に伴う値札の付け替えのため従業員を派遣してほしい」と要請して別のコストを押しつけるケースがあった。手段が巧妙化しており、同庁は「潜在的な違反企業は、まだある」(事業環境部取引課)とみている。

 また、増税後は「消費税分を差し引いた減額請求や協賛金を中小企業に求める行為が懸念される」(内閣府)。転嫁が円滑に進まなければ中小企業の業績改善が進まず、景気を冷やす要因の一つになる恐れもある。

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