2014.5.10 05:00
安倍晋三首相が意欲を示す法人税の実効税率引き下げに向けて、政府税制調査会(首相の諮問機関)が検討してきた代替財源のメニューが9日、出そろった。特定業界を税優遇する政策減税の縮小・廃止などが柱となるが、税制改正の実権を握る自民党税制調査会は政策減税の大幅な見直しに慎重で、調整の難航は必至。政府が6月の経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込む実効税率の引き下げ幅をめぐっては、代替財源をどれだけ確保できるかが鍵を握る。
優遇措置見直し
9日開かれた政府税調の法人税改革を専門に検討する部会では、中小企業や公益法人の法人税率が特例的に低く抑えられている現在の優遇措置を見直す方向が示され、改革に向けて検討を進めることが確認された。
これで、政府税調が検討してきた実効税率引き下げの代替財源候補が出そろった。政府税調では、この中からメニューを選び、月内に税率引き下げに向けた改革案をまとめる方針だ。
現在35.64%(東京都)の法人実効税率をめぐっては、甘利明経済再生担当相が9日の会見で、「大事なことは税率が30%を切ることだ」と述べ、今後5年程度で20%台に引き下げるべきだと強調。経済財政諮問会議の民間議員も15日の会合で、実効税率を来年度からの3年でアジア並みの20%台に引き下げるよう求める予定だ。ただ、税率20%台を実現するためには、6%の引き下げが必要で、最低でも約3兆円の税収の“穴”を埋めなければならない。
麻生太郎財務相は9日の会見で、「課税の対象範囲を広げないと(財政健全化との)バランスが取れない」と述べ、財政再建との両立には代替財源が欠かせないとの姿勢を改めて強調した。
規模に焦点
確かに、政府税調で候補に挙がったすべてのメニューを全廃すれば20%台への引き下げ原資を捻出できる。しかし、自民党税調は、デフレ脱却に向け、設備投資や研究開発減税などの政策減税の大幅な見直しに慎重な姿勢を示しており、実際には小幅な見直しにとどまる可能性もある。
財源をめぐっては、諮問会議の民間議員が景気回復などで計画より上振れた税収を実効税率の引き下げ原資に活用すべきだとの考えを示す。甘利氏も9日の会見で、「税収上振れ分を成長に資することに使っていくことが大事」と語り、税収を充てることに理解を示す。
これに対し自民党税調の野田毅会長は、2020年度の基礎的財政収支の黒字化を達成するため「税収上振れ分は財政再建に充てるべきだ」と否定的で、代替財源をどれだけ確保できるかの議論の行方は混沌(こんとん)としている。
骨太方針では、来年度から3~5年程度かけて20%台と明記する案が有力となっている。ただ、下げ幅を決めるのはあくまで自民党税調の役割で、それに基づいて安倍首相が最終的に決断する。国際的に高い水準にある法人実効税率の引き下げにどこまで踏み込めるか-。世界の市場関係者が注目する中、骨太方針で下げ幅と実施時期について、どこまで踏み込んだ書きぶりとなるかが最大の焦点となっている。
■法人実効税率引き下げの代替財源候補
項目 財源捻出策 財源規模
減価償却費の見直し 償却費の方式を定額法に一本化し初期財源を確保 最大5000億円
中小企業支援税制の見直し 法人税率を低く抑えている特例措置の適用範囲の縮小 最大960億円
欠損金の繰越控除の縮小 赤字の繰越期間を現行9年から縮め、限度額を所得の8割から下げ 数百億円~数千億円
配当金の益金不算入の縮小 資産運用目的の株式保有は益金算入し企業に税負担 数百億円
外形標準課税の見直し 黒字企業に対する減税を強化する一方、赤字企業は増税に 数百億円規模
公益法人課税の見直し 法人税率を低く抑えている特例措置の適用範囲の縮小など 最大約180億円
研究開発減税の縮小 平均売上高に占める10%を超える研究開発費減税を縮小 約100億円