中韓の“ニンニクリターン騒動” 「二重基準だ!」「文句があるなら訴えろ!」

2015.3.1 07:05

 中国の食べ物をめぐるトラブルは枚挙にいとまがないが、最近クローズアップされているのは、「ニンニク」をめぐる中国の生産業者と韓国政府とのトラブルだ。中国の生産業者が大量のニンニクを韓国に輸出しようとしたところ、韓国検疫当局の品質検査で不合格となり、すべて中国に返送されてしまった。納得できない業者側が反発し、中国・北京の韓国大使館前で抗議活動を展開するなどの事態になっている。先ごろ話題になった「ナッツリターン」ならぬ「ニンニクリターン」騒動。両者の間に何があったのか。(山口淳也)

 損失1・9億円

 中国紙の北京青年報が今月初めに伝えたところなどによると、中国・山東省のニンニク生産業者が昨年11月、韓国政府機関の韓国農水産食品流通公社の入札公告に応札し、計約2200トンのニンニクを韓国に輸出する契約を締結。12月に入り、同省の青島港から船積みした約2200トンのニンニクを韓国・釜山港に送った。しかし韓国の検疫当局による品質検査で「規定に満たない」と不合格とされたという。

 この決定に業者側は抵抗したが、結局、ニンニクは中国に送り返された。青島港に一時留め置かれ、保管費用がかさんだことなどもあって、業者側の損失は1千万元(約1億9千万円)以上に達する見通しという。

 二重基準?

 業者側の怒りは収まらない。「ニンニクは最高品質のものを用意した」とし、輸出前には韓国農水産食品流通公社の品質検査をクリアしたという。しかし、韓国到着後に品質検査を行ったのは、同公社とは別の機関の韓国農産物品質管理院で、同院に不合格と判断された。このため、品質に問題はないのに一方的に不合格にされたと主張。また、韓国側の2つの機関の安全基準が違っているのが問題の原因で「不合格の結果は受け入れられない」としている。

 さらに、業者側が韓国の農水産食品流通公社を抗議に訪れたところ、担当者から「文句があるなら世界貿易機関(WTO)に訴えてみろ」と暴言を吐かれたという。

 こうした経緯もあり、業者側の怒りは頂点に達した。今年1月下旬、業者側は北京の韓国大使館前に約20人が詰めかけて抗議デモを実施。損失に対する補償を要求した。

 また韓国の朴槿恵大統領には公開書簡を送付。「私たちの血と汗によりニンニクを生産したのに、金が得られず生活は非常に苦しくなっている。私たちの両親や家族は涙を流している。厳しい状況と巨大な損失を理解してほしい」と訴えている。

 こうした報道を受け、中国国内では、韓国政府に対する反発が沸騰。インターネット上では「韓国政府は信用できない」「韓国が賠償すべきだ」としたものから、「韓国人は民度が低い」などと品のない批判までもが展開されている。

 韓国側は静観?

 今のところ、この「ニンニクリターン」騒動を取り上げているのは中国のメディアやネットが中心で、韓国では目立った報道はあまりないようだ。

 中国メディアによると、韓国当局が不合格とした理由について「輸出前の消毒で化学物質が残留していたのでは」などの説もあったが、韓国当局による不合格書類にはそうした記載はなかった。

 今回のニンニクは全体の5%以上が病虫害、傷、カビなどを原因とする斑点があるなどの不良品だったため、入札公告時にも明示した規定に基づき、全体の受け入れを拒否したという。

 また、中国当局側も冷静さが目立つ。駐韓中国大使館が韓国政府の担当部署と協議しているとの情報はあるが、政府関係者は中国メディアの取材に「今回の件は商業契約による紛争だ」とし、「韓国側が、中韓の経済貿易協力という大局的見地から適切に処理し、両国の貿易の建設的な発展を保護することを期待する」とコメント。強力に介入するといったムードは感じられない。

 中国では「損害を受けた業者がかわいそう」と多くの同情の声が寄せられているようだが、今のところ、業者側の分は悪そうだ。

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