TPP交渉、24日からハワイ会合 成否かけ攻防 知財、「カナダ」が重荷

2015.7.21 08:48

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は今週末から、成否をかけた大詰めの攻防に入る。舞台となるのは米ハワイで24日から開かれる交渉参加12カ国の首席交渉官会合と、続く28日からの閣僚会合だ。交渉は大筋合意の機運が高まっているが、知的財産などの難題を残し、出遅れが目立つカナダも重荷となっている。合意に至るかは、なお楽観ができない状況だ。(本田誠)

 「各国に対して、いよいよ最後の会議にしなければならないというメッセージを送っている」

 甘利明TPP担当相は17日の記者会見でこう明かした。交渉の合意に不可欠とされた米貿易促進権限(TPA)法が6月に成立したことで、日米を中心に今回のハワイ会合にかける意気込みは大きい。

 ハワイ会合では、首席交渉官会合や閣僚会合に並行して、2国間の関税協議のほか、知的財産や投資などの懸案で少数国の協議も開かれる。

 甘利氏はハワイで12カ国が合意に達する可能性について「70%くらいの確率」との見通しを示している。これに対し、交渉筋の間では「10%程度」と極めて悲観的な見方もある。

 交渉の現状はどうなっているのか。

 TPPの協定文31章のうち「終了」か「ほぼ終了」に分類されるのは税関・貿易円滑化や競争政策、越境サービスなど17章。首席交渉官会合での決着が見込まれるのが、物品市場アクセス(関税)のルール部分や原産地規則、政府調達など8章だ。難航しているのは、知的財産や国有企業など4章。決着は閣僚会合での政治判断に委ねられる。

 なかでも知的財産では、新薬の開発データの保護期間をめぐる対立は打開の糸口がつかめていない。

 有力な新薬メーカーを多く抱える米国は保護期間を12年にするよう要求。安価な後発薬を普及させたいマレーシアなど新興国やオーストラリア、ニュージーランドは5年以下を主張している。特に、国民の薬代を国費で助成しているオーストラリアやニュージーランドは財政負担の増大を懸念し、徹底抗戦の構えを崩していない。

 日本は8年を落としどころとしたい考えだが、「米国も政治力の強い医薬品業界が12年を実現するよう政府に対し強硬に圧力をかけており、足して2で割れば済むという状況ではない」(交渉筋)という。

 2国間で進めている関税の撤廃・削減に関する協議は最終的に閣僚間の直接折衝で決着を図る見通しだ。

 日米協議は、日本が設けるコメの無関税輸入枠の扱いが焦点となる。

 主食用米の輸入枠の規模について、米国が年17万5千トンを訴え、日本はこれまで5万トンが限度と主張してきた。日本は最大7万トン程度まで段階的に拡大する譲歩案も検討するが、米国の要求とはなお開きがある。米国は輸入が確実に実現するよう日本政府の保証も求めている。

 関税協議で問題視されているのがカナダとニュージーランドだ。10月に総選挙を控えるカナダは消極姿勢が目立ち、ニュージーランドも乳製品の市場開放という自国の要求に固執し、交渉全体の足を引っ張っている。参加国内で両国を除外した合意を容認する意見も出ているが、「米国はカナダの市場開放も重視しており、実際にカナダ抜きの合意に踏み切れるかは見通せない」(同)のが現状だ。

 ハワイ会合で合意ができれば、参加国は10月末にも協定文に署名する。逆に合意に失敗すれば、来年に次期大統領選を控える米国などの政治日程を踏まえ、交渉が中断を余儀なくされる懸念も指摘されている。

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