東南ア各国、高齢化進み経済打撃も 社会保障制度、整備追い付かず

2016.3.15 05:00

 若い労働力を支えに経済成長を続けてきた東南アジアで、高齢化が急速に進行している。あまりに急激なペースに社会保障制度の整備が追い付かない各国。対策の遅れが、長期的な成長の足かせになるとの懸念も広がっている。

 ベトナム北部バクザン省ベトゴック村。稲作農家が多く「高齢者だけの家庭が最近増えてきた」と住民は口をそろえる。

 無職のグエン・スアン・トゥさん(73)は妻(70)と2人暮らし。2人の息子、2人の娘は、いずれも結婚して家を離れた。「コメづくりは収入が少ないし、ここではいい働き口がないからね」

 現金収入は月80万ドン(約4100円)の年金と手づくりのほうきを売って得ている。「昔は高齢者が今ほど多くなく、いても子供や孫と一緒に暮らしていた。子供と離れて暮らすのは寂しいよ」。村役場の職員は「高齢化が進み、お年寄りの生活を支える働く世代の負担が増えている」と話した。

 国連によると、2015年と50年に60歳以上の高齢者が人口に占める割合は、日本が33.1%から42.5%となるのに対し、ベトナムは10.3%から27.9%、タイは15.8%から37.1%に急増すると見込まれる。

 加速する高齢化について、国連人口基金(UNFPA)ベトナム事務所のリツ・ナッケン副所長は「大きな理由の一つは出生率低下のスピードの速さだ」と説明。ベトナムでは年金など社会保障制度が先進国ほど整備されていないことから「(若い)労働者人口が多い今のうちに制度を整えるとともに、年を取っても働けるように高齢者の活用を進めるべきだ」と指摘する。

 国連の基準で既に高齢化社会に突入しているタイでも、医療介護サービスや社会保障制度の拡充が課題だ。国が豊かになる前に高齢化が進み「経済が打撃を受ける」と産業界は憂慮する。

 高齢化で先を行く日本はノウハウを生かし、国際協力機構(JICA)がタイで要介護者のサービス開発に取り組んでいる。首都バンコクや地方都市など計6地域で、日本の介護制度を基に、お年寄りの在宅ケアプランを作成。実際に介護をしながら効果を分析し、17年までにタイ政府に政策提言する計画だ。

 JICAの担当者は「地域で助け合う文化が根付くタイに適した制度を作り、いずれは東南アジア各国とも共有したい」と意気込んでいる。(ハノイ、バンコク 共同)

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