しのぎを削るフィリピン“インフラ戦争” 官民タッグで中国に真っ向勝負

2017.5.6 06:15

 日本の官民がフィリピンに熱い視線を注いでいる。安倍晋三首相が1月に同国を訪れ、ドゥテルテ大統領との会談で今後5年間、官民合計でインフラ関連などに1兆円規模の支援や投資をすると表明。大手商社など民間企業トップの「フィリピン詣で」も活発化している。同国のインフラ市場で大きな商機が見込めるためだが、液化天然ガス(LNG)輸入基地や鉄道などの大型案件をめぐる中国企業との受注争いも熾烈(しれつ)化しそうだ。

 日比間で新たな経済協力が浮上したのは、昨年10月のドゥテルテ大統領の訪日が契機だ。3月下旬にはインフラ事業を支援する「経済協力インフラ合同委員会」の初会合が東京で開かれ日本は電力インフラ整備や効率化の行動計画を提案。今秋にも開く第2回会合は鉄道インフラなども議題に上る見通しだ。

 日系進出は倍増

 今なぜ、フィリピンなのか。好調な経済を背景に、日本企業の進出数は自動車関連や電子部品、コンビニエンスストアなど1448社と、過去10年で倍増した。今後の最大の商機は同国のボトルネックとなっているインフラで「電力や交通、防災システムなど商機は山ほどある」と日本の産業界の鼻息は荒い。

 日本が力を入れる背景には、海洋安全保障に向けた連携強化に加え、アジア向けインフラ輸出をめぐる中国との競争がある。

 国際協力機構(JICA)の協力で提案したインフラ基本計画には渋滞緩和を目指す南北通勤鉄道事業やマニラ圏地下鉄事業、新マニラ国際空港事業などが盛り込まれた。南北通勤鉄道は2015年にJICAが約2419億円の円借款供与を契約済み。南北通勤線とクラーク自由港、スービック湾自由港を結ぶ鉄道敷設構想には日本と中国が名乗りをあげている。

 現地報道によると、フィリピン政府が進めるLNG輸入基地やガス発電所の受注をめぐり、日本のガス会社と大手商社の連合や中国の国営、民間企業を含め20社超が水面下でしのぎを削っているという。

 一方、ドゥテルテ大統領は昨年10月の訪日直前に中国を訪問し、今年1月にはドミンゲス財務相らが中国政府にインフラ関連の協力を要請するなど、インフラで日中をてんびんにかけるしたたかな動きも見せている。

 「質」で差別化

 ライバルとの競争激化の中で、日本政府は日本企業が強みを持つ「質の高い」インフラで差別化し、政策金融と政策提案の両輪で日本企業を支援する作戦だ。フィリピンはアジアの電力自由化先進国だが、電力料金が相対的に高く、効率性も低い。手をこまぬいていると今後の経済成長に伴う電力需要をまかなえないのが実情だ。

 このため、日本政府は石炭火力発電や水力発電などの既設発電設備の改修やモノのインターネット(IoT)システム導入を発電効率の向上や電力料金の値下げにつなげるという構想をまとめ、補助金を付ける民間の有望電力プロジェクトを募集。この中からフィリピンの電力会社が承認した、水力発電や石炭火力の改修、風力など再生可能エネルギーの導入案件などにJICAが資金を供与する考えだ。

 将来的には発電所新設の認可条件として、環境に配慮した質の高い電力システム導入を義務づけ、国全体の発電効率をあげるプランも提案する。受注を勝ち取れるかは「初期投資は若干高くてもトータルで考えれば割安」という日本流が受け入れられるかどうかにかかっている。(上原すみ子)

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