仮想通貨のマネロン対策、協調がカギ G20、各国対策強化で一致

2018.3.22 05:30

 G20では、仮想通貨を使ったマネーロンダリング(資金洗浄)対策について、国際基準を定めるFATFに対策強化を求めることなどで一致したが、課題は各国が協調できるかだ。仮想通貨は国境を越えて取引されるため、規制が緩い国が一つでもあれば“抜け道”になりかねない。犯罪抑止には各国の足並みをそろえることが不可欠だが、仮想通貨に対する考え方が異なる中、足並みをそろえるのには時間がかかりそうだ。

 「仮想通貨のマネロン対策で最も重要なのが交換所での本人確認だ」。ある捜査関係者はそう強調する。仮想通貨はブロックチェーン(分散台帳)という技術の上で成り立っており、取引が全て記録されているという特徴がある。そのため、一般的には仮想通貨が取引された口座を追跡し続けることは可能だ。

 しかし弱点もある。口座の所有者は特定できないようになっており、現金を仮想通貨に換える際に、交換所が身元を確認しておくことが犯罪を防ぐには不可欠なのだ。

 FATFも2015年に交換所の本人確認や疑わしい取引の届け出などの義務化を促す指針を公表。指針を受け、日本では昨年4月に資金決済法が改正され、仮想通貨交換業者に登録制が導入され、口座開設時の本人確認などが義務付けられた。

 ただFATFの指針はあくまでも努力義務だ。仮想通貨に詳しい大和総研の矢作大祐研究員は「新興国では本人確認を必要としない交換所がまだ多い」と話す。こうした国はそもそも、金融システムや監督行政も未成熟で、先進国のようにすぐに対策を取ることが困難なのだという。また、規制強化は産業の育成の妨げになるとして後ろ向きな国もあるという。一部の国が規制を強化しても、犯罪者は規制を逃れるために国外の交換所を使う可能性があり「一国の対応では限界がある」(矢作氏)のが現実だ。

 「仮に各国が本人確認を導入したとしても、その質が重要になってくる」と指摘するのは、情報セキュリティー会社「エルプラス」社長の杉浦隆幸氏だ。偽造された身分証で簡単に口座が作れるようでは、犯罪抑止には不十分だからだ。不審な資金の動きがあった際に、捜査機関に通報したり、照会要請に応じるといった連携をすることも大切だという。

 杉浦氏は「本来、仮想通貨は資金の流れがたどれるため、マネーロンダリングには適していない。各国が対策を強化すれば犯罪に使われるケースは大幅に減るだろう」と述べている。(蕎麦谷里志、菅野真沙美)

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