日銀総裁、物価2%上昇の達成時期削除 不確実性、正確な予測困難

2018.5.11 06:02

 日銀の黒田東彦総裁は10日、東京都内で講演し、4月の金融政策決定会合でこれまで明示していた物価上昇率2%目標の達成時期見通しを削除したことについて「各種のリスクがあり、不確実性が大きい状況では計数のみに過度な注目が集まることは適当ではない」と理解を求めた。

 黒田氏は、15年間に及ぶデフレ経験が人々の意識や行動に深く根付いており、物価見通しは「下振れリスクの方が大きい」と説明。2%達成に向けた物価上昇の勢いは維持されているとしつつも、経済を正確に予測することは困難だとして、今後は「情勢を総合的に点検し丁寧に説明する」と述べた。

 ただ、「2%達成の具体的な期限を念頭に金融政策を運営しているわけではない」とも指摘し、達成が遅れた場合、さらなる追加緩和が必要になるとの市場観測を牽制(けんせい)した。

 また、「2%をできるだけ早期に実現する約束に変わりはない」と訴え、大規模な金融緩和を今後も粘り強く続ける考えを示した。

 一方、日銀がこの日発表した4月の決定会合の「主な意見」では、2%達成時期の削除に対し、政策委員から「目標達成に向けたコミットメント(約束)を弱めてしまう」と懸念する声が出たことが分かった。

 “官製春闘”の恩恵で賃上げが続く中でも予想物価上昇率は勢いを欠く。今後2%目標の信任が揺らぐ事態になれば、日銀が目指す「デフレマインドの転換」も難しくなりかねない。

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