2018.5.18 22:25
18日に成立した改正著作権法により、授業の教材として教員から生徒に書籍や新聞記事などの著作物をメール配信することが容易になる。これまで著作権者の許諾無しに配布できたのは紙に印刷した著作物だけだった。国はタブレット端末の導入など情報通信技術(ICT)を活用した教育を推奨しており、学校現場の環境整備が期待される。
現行の著作権法では、教員が新聞記事や小説などの著作物を教材として生徒の端末にメール送信する際には、学校側が出版社や新聞社などの著作権者と個別に契約し、使用料を支払うことが必要となる。
国はICT教育の促進を推奨する一方、学校側は教材に使いたい資料の著作権者を探す必要があり、教育現場からは「著作権者を探す手間がかかり、ICT教育がうまくいかない」「手続き上の問題で使用を断念したことがある」といった不満の声が上がっていた。
このため文化庁はネットを取り巻く環境の変化に応じた新たなルールを検討してきた。改正法では著作権者の許諾を不要として利便性を高める一方、著作権者の権利を守るため、学校側が著作権者に補償金を支払う新たな制度を導入する。
新聞協会や文芸家協会などで構成し、文化庁が指定する管理団体を設置し、団体が権利者に補償金を支払う。学校側の負担が大幅に軽減され、著作物が教材として積極的に活用されることが見込まれる。
早稲田大大学院の上野達弘教授(知的財産法)は「小説や新聞記事などの著作物を電子データで送信できなければICT教育に対応することはできない。教育現場の利便性を高めるためには著作権法の見直しが必要だった」と改正法の意義を強調した。
一方、日本書籍出版協会の川又民男調査部長は、改正法について「権利が制限されるものであり、歓迎はできないが、時代の要請に対応したやむを得ない改正だと思う」とした上で「著作物が広く知られるようになる面もあるので、適切な法律の運用に期待する」と理解を示した。(今仲信博)