米鉄鋼輸入制限、適用除外の拡大要請へ 経産相、考えを強調 EUは報復措置を発動

2018.6.23 06:09

 政府は米国による鉄鋼などの輸入制限をめぐり、引き続き日本製品全体が適用除外になるよう米国に要請する。世耕弘成経済産業相は22日の記者会見で、米国が輸入制限から一部適用除外にした製品の多くが日本製であると指摘した上で、日本製品全体の除外を働きかける考えを強調した。欧州連合(EU)は22日、米国製品に報復関税を発動。日本は適用除外の動向などを見極め、慎重に今後の対応を判断する。

 世耕氏は22日の閣議後の記者会見で、トランプ米政権が20日発表した輸入制限の適用除外製品は約1万5000トンにのぼり、このうち3分の2にあたる約1万トンが日本製と推計されることを明らかにした。日本製品の比率が高かったことを受け、世耕氏は「日本は代替不能品が多い」と指摘し、今後の適用除外の拡大に期待感を示した。

 米商務省は3月に発動した鉄鋼などに高関税を課す輸入制限で、製品別の除外を米企業から受け付け、最長90日で審査する手続きを進めている。第1弾として日本や中国、ドイツなどから輸入する一部の製品を適用除外にすると発表。日本製はJFEスチールなど少なくとも2社が含まれている。製品別除外は外国製に頼らざるを得ない高機能な製品が対象だ。

 しかし、日本から米国への鉄鋼輸出量は年間で約200万トン。今回適用除外を受けた製品の多くが日本製とはいえ、輸出全体に占める割合では1%にも満たない。今後の審査で適用除外製品はさらに増える見通しだが、「審査手続きは遅れ気味」(大手鉄鋼関係者)との指摘は多い。

 このため政府は製品別除外と並行し、日本製品全体が対象となる国別での適用除外も米国に働きかける。茂木敏充経済再生担当相は22日の記者会見で、「追加関税措置の適用除外を引き続き米国に求めていく」と述べた。茂木氏は7月から開始する新たな日米の通商協議を担当する。

 鉄鋼輸入制限をめぐっては、既にEUや中国、カナダなど6カ国・地域が世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを開始。さらにEUは22日に報復関税を発動し、トランプ米政権に圧力をかける。日本はWTOに対抗関税の可能性を通知しているが、現時点では米国への対抗措置の発動に消極的だ。世耕氏は今後の対応について「日本企業への影響を精査しながら検討する」と述べた。

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