RCEP閣僚会合 米保護主義に狭まる包囲網 メガFTAに焦燥感も

2018.7.1 23:16

 【ワシントン=塩原永久】RCEP閣僚会合で批判の矛先を向けられたトランプ米政権は依然として、RCEPやTPPに代表される「メガFTA(自由貿易協定)」から距離を置いている。しかし貿易相手国が発動した対米報復関税は産業界に打撃を及ぼし始めており、対米包囲網への焦燥感もうかがえる。

 米国は3月に鉄鋼輸入制限を発動。今月6日には中国による知的財産権侵害に対抗する制裁関税を発動する。さらに今月下旬には関税適用を視野に入れた輸入車の調査を終える方針だ。鉄鋼輸入制限をめぐっては中国やEU、カナダから報復関税を課されており、多方面で摩擦が強まる。

 米国の保護主義的な動きをめぐっては負の影響も顕在化してきた。米二輪車大手ハーレーダビッドソンは米国製に報復関税を課したEU向けの生産を海外移管すると発表。タイに新工場を作る計画も進めている。また自動車部品も対象とされる自動車の輸入制限検討には、米国内の自動車産業からも「競争力を損なう恐れがある」(ゼネラル・モーターズ)などと深刻な懸念が出ている。

 米国内では「トランプ大統領がTPPから脱退したことでハーレーはアジアでの競争が困難になった」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)との批判も広がる。TPPなどのメガFTAに乗り遅れることへの焦燥感は根強い。

 また貿易相手との摩擦には米政権自身も警戒感を隠せない。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「報復関税は、世界貿易システムを支配しているものが、完全な偽善なのだと明確に示した」として、各国がとる対米報復措置への非難に躍起だ。

 こうした中、メガFTAに出遅れることで海外市場が奪われる米産業界や農業界には、貿易相手国に市場開放を迫るよう米政権に求める声も強まっている。米政権は「日本市場が最も興味深い」(USTRの農業担当幹部)と関心を示しており、米国抜きのメガFTAの推進が逆に米政権による対日圧力の強化につながる可能性もある。

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