与党内で異論、くすぶる在留資格新設 法案提出に遅れも

2018.10.24 07:50

 自民党は23日、党本部で法務部会を開き、外国人労働者の受け入れ拡大に向け新たな在留資格を設ける出入国管理法改正案について関係団体からヒアリングを行った。人手不足に直面する各団体が受け入れを求めたのに対し、出席議員からは日本人の待遇や社会保障への影響、受け入れ態勢の不備などを指摘する意見が相次いだ。政府は臨時国会で改正案を成立させる考えだが、公明党からも慎重論が出ており、国会提出が遅れる可能性がある。

 「東日本大震災後、人手不足が続き、若年層の確保に苦労している」(日本建設業連合会)

 「介護保険制度を持続可能なものにするのに人材不足が足かせだ」(全国老人福祉施設協議会)

 自民党の法務部会では、建設や農業など団体の代表者が口々に受け入れ拡大と自らの業界への適用を求めた。政府は、外食や宿泊なども含め要望のあった14業種での適用を検討している。

 ただ、議員からは改正案への反対や慎重な議論を求める声が相次いだ。

 青山繁晴参院議員は、外国人の採用で日本人の給料や待遇の改善に影響することや仕事がなくなった場合に不法滞在につながる恐れに触れ、「制度設計が未成熟だ。対策がとれておらず反対だ」と批判した。

 小林鷹之衆院議員は「将来、労働力が余れば外国人と日本人が仕事を奪い合う事態になる。永住した場合の医療や介護などのコストをどう見積もっているのか」と疑問を投げかけた。

 政府は臨時国会で改正案を成立させ、来年4月から新たな在留資格の運用を始める青写真を描く。

 法務部会は25日まで3日連続でヒアリングを行い、26日に改正案審査に入る。だが、了承を得られず党内手続きに時間がかかれば、国会提出が遅れかねない。

 23日の公明党の会合でも「人手不足という理由だけで外国人を受け入れれば対象産業の若手が育たなくなる」「受け入れ企業が倒産したら転職できるのか」などの異論が相次いだ。太田昭宏前代表も慎重な対応を求めた。出席者の一人は「今のままでは党の審査は通らない」とこぼした。

 来夏に参院選を控え、導入を希望する業界団体の支持は与党にとって魅力だ。一方で、「支持者には治安悪化や住民トラブルへの懸念もある」(自民党参院議員)との声もあり、党内の意見はまとまっていない。(田村龍彦、大橋拓史)

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