金融庁、3世代での資産形成を促す 人生100年見据え報告書を取りまとめ

2019.6.4 07:30

 金融庁は3日、長寿化が進む人生100年時代において、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書を取りまとめた。「これまでより長く生きる以上、多くのお金が必要となる」と指摘し、生活水準を維持するには保有資産の運用など“自助”の取り組みが重要と指摘。「現役期」「退職前後期」「高齢期」の3世代に分けて実施すべき対応策を例示した。

 報告書では夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では、毎月平均5万円の収支不足が生じているとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2000万円が必要と試算した。その上で公的年金が「老後の収入の柱であり続けることは間違いない」としながらも、支出の再点検や保有資産を活用した資産運用などで、資産寿命を延ばす取り組みが必要とした。

 具体的には、仕事をして収入のある「現役期」は、老後までの時間が長いことをメリットとして挙げ、少しずつでも毎月一定額を複数の投資商品に長期間、分散して投資し続けることを提案。長期的につきあえる金融機関や投資アドバイザーを見つけておくことも重要とした。

 「退職前後期」は退職金や年金受給額などを把握して、マネープランの再検討を推奨。資産の不足が予想される場合は就労期間を延ばすことや、住宅の売却や物価の安い地方への移住も選択肢とした。

 心身が衰え始める「高齢期」では、大病や老人ホームへの入居などで、当初の想定よりも医療や介護の費用が膨らんでいる可能性があると指摘。その上で、将来起こりうる認知機能や判断能力の低下に備え、金融資産を整理し、通帳の保管場所や資産情報を信頼できる第三者と共有するといった対策が重要とした。

 5月に示された報告書案では、公的年金の給付水準について「今までと同等と期待することは難しい」などと“公助”の限界を認めるような記述があり、ネット上などで批判的な意見が相次いでいたが、金融庁は「年金制度について議論してきたわけではないので、そこに注目が集まるのは望ましくない」と、該当部分の記述は削除した。

 ■老後資金が不足しないように金融庁がまとめた提言

 ≪現役期≫

 ・老後まで多くの時間があり、早い時期から資産形成を行う重要性と有効性を認識する

 ・少額でも資産形成の行動を起こす

 ・信頼できるアドバイザー、長期的に取引できる金融サービスの提供者を選ぶ

 ≪退職前後期≫

 ・退職後の人生が長期化していることを認識し、資産の目減り防止や計画的な取り崩しを検討

 ・受け取れる退職金や年金などを確認。不足する可能性がある場合は就労継続を検討

 ・住居費や生活費が安い地方への移住も選択肢

 ≪高齢期≫

 ・老人ホームへの入居など想定よりも医療・介護費用が高い可能性があり、マネープランを見直す

 ・認知・判断能力の低下に備え、資産の管理方針を事前に決定

 ・資産の管理方針や通帳の保管場所などを信頼できる人と共有

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