【現場の風】日本貿易振興機構 IT関連進出や第三国への輸出増

2019.12.11 05:00

 日本貿易振興機構(ジェトロ) インド総代表・村橋靖之さん(55)

 --5月に2期目に入ったモディ政権の課題は

 「2019年の第1四半期の国内総生産(GDP)は5.0%増と6年ぶりの低水準で、消費は自動車販売の落ち込みが目立つ。不良債権問題を抱える金融機関の貸し渋りでローンが組みにくい事情もあり、今年3月頃から前年同月比マイナスが続く。政府による銀行への公的資金投入もあり、20年後半くらいからGDP成長率も上向くのではないか。肌感覚的には数字ほど悪くない」

 --日系企業の景況感は

 「昨年10月時点で1441社が進出しているが、6、7割が自動車関連企業だけに今後は少し一服感もある。国内市場の成長性に加え、インドの地の利を生かし、第三国市場を狙う展開も増える。ダイキンは昨年、東アフリカビジネスの管轄を欧州からインドに移管し、インド産エアコンを中東やアフリカに輸出している」

 --米巨大IT企業はインド市場を重視している

 「楽天は昨年、インド南部のバンガロールに技術研究所を開設し、ソニーも従来の拠点に加え人工知能(AI)関連の研究所設置を発表し、ITにターゲットをおいたビジネスの動きが広がる。IT人材の裾野が広いことから、人材にも注目し、大学とも連携したい考えだ。一方で中小企業の進出は鈍く、進出を後押ししたい」

 --税制など投資環境の課題が多く、ビジネスしにくいイメージがある

 「農業用トラクターなどに用いる耕運爪のメーカー、太陽(高知市)は巨大な農業国で農業の近代化が必要なインドに商機を見いだし、工場を操業。取引先も増え、市場に合わせた商品開発で販売も伸びている。13億人を超える人口は、将来は中国を抜き世界1位となる見通しで成長性は高い。中東などに比べ、ビジネスが難しいとは思わないが、長期の視点で取り組むことが必要だ」

【プロフィル】村橋靖之

 むらはし・やすゆき 1989年慶大法卒、日本貿易振興会(現日本貿易振興機構=ジェトロ)入会。マレーシア、イスラエル、サウジアラビア、トルコなどに駐在。今年6月からインド総代表兼ニューデリー事務所長。山口県出身。

閉じる