日本軍の艦船、潜水名所に フィリピン・コロン湾、劣化懸念も周辺の街に潤い

2020.2.7 06:30

 フィリピン西部ブスアンガ島周辺のコロン湾に、太平洋戦争中、米軍が撃沈した日本軍の艦船が眠っている。ダイビングの名所として各国のダイバーの人気を集めているが、長い歳月を経て腐食が目立つものも。地元ダイバーは「劣化も運命」と流れに身を任せている。

 濃いエメラルドグリーンの穏やかな海に小型ボートからダイバーが次々と飛び込む。目標は海底にある沈船だ。海上から肉眼で見えるものもあり、シュノーケリングをしていたドイツ人女性は水面から顔を出すと、親指を立てて笑った。

 コロン湾は小島が多く、入り組んだ地形で隠れやすいため、戦争中に日本軍の艦船が停泊していた。しかし米軍に発見され、1944年9月に爆撃を受け沈没した。戦後、地元の漁師や機雷除去のため訪れた米軍が見つけたという。

 ブスアンガ島コロンのコロン・ダイバーズ協会によると、コロン湾や周辺に日本艦船24隻が沈んでいるとされ、そのうち水上機母艦「秋津洲」など10隻が特定された。船体はサンゴや藻に覆われ、大小さまざまな魚が集まる。90年代にダイバーの注目を浴びるようになった。初心者向けの水深10メートルや上級者向けの43メートルなどレベルに応じた深さにあることも人気の理由だ。

 ダイビング店で潜水指導をするパトリック・プレストンさんは「沈船のおかげでコロン湾周辺の町は観光客で潤うようになった」と話す。一方で「老朽化が進み、何隻かは数年もすれば壊れ始めるだろう」と懸念する。海底での修繕は困難で「ダイバーの安全に配慮しつつ、そのままにするしかない」と悩ましい心境を打ち明けた。(コロン 共同)

閉じる