外出自粛で活気失った首都に落胆 「意識浸透」評価の声も

2020.3.28 21:53

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京、神奈川、埼玉で不要不急の外出自粛が始まった28日、繁華街や観光地の多くは静寂に包まれた。活気を失った首都の風景に落胆の声が出る一方、感染対策の浸透を評価する人も。スーパーではこの日も、朝から食料品を買い込む行列ができた。

 「浅草は10分の1」

 「やっていますよー。いかがですか」

 28日午前、東京都台東区の浅草寺雷門周辺では人力車の車夫らが呼び込みに声を張り上げていたが、人影はまばら。昼前になると、キャリーケースを引いた家族連れや若者の姿が少しずつ増え始め、開店準備する店も出てきたが、「臨時休業します」との張り紙が掲示され、シャッターを下ろしたままの店も多かった。犬を連れて散歩していた近所の20代女性は「いつもの10分の1くらいの人出。観光地なのに寂しい」。

 毎週末行われている歩行者天国が28、29日の両日は中止になった東京・銀座も普段に比べて圧倒的に人の姿は少なかった。一方で、営業している百貨店の近くなどでは、買い物袋を持って歩く人の姿もみられた。ドラッグストアのレジでは、行列もできていた。仕事のために銀座に来たという接客業の男性(25)は「昨日、休業するか話し合ったが、お客さまもいるので短縮で営業することにした。自粛だと判断が非常に難しい。国や都が補償なども含めてきちんと決めてほしい」と話した。

 公園の風物詩も

 桜の名所で知られる上野公園(台東区)では、シートを広げて宴会を楽しむ花見客の姿はなかった。満開になり、見頃を迎えた桜の並木道には「きけん立入禁止」と記されたテープが張られ、約500メートルにわたって通行が規制された。

 スマートフォンやカメラを持った通行人らがテープ越しに代わる代わる桜を撮影。散歩中だった区内の主婦(45)は「桜が咲いているのに花見客がいないという光景は見たことがない。花見で公園がにぎわうのも風物詩なのに」と残念そうだった。

 感染経路不明のケースへの行動調査では「夜の繁華街の飲食店」が浮上した。学生たちでにぎわう東京都新宿区の高田馬場駅周辺の飲食店では、午後6時半ごろになっても、多くの店で空席が目立った。学生が多く利用している居酒屋では30人程度が来店する時間帯だが、この日は3人ほど。アルバイトの女性(21)は「今日はシフトも減らしていつもの3分の2程度の人数で対応している。今後が不安」とこぼした。

 スーパーは行列

 神奈川県内でも、繁華街が閑散とした。横浜市の横浜赤レンガ倉庫は28、29の両日を臨時休業。普段の週末は多くの人でごった返す倉庫周辺の広場も観光客の姿がぱったりと消えた。閑散とした広場には時折、ランニングや飼い犬の散歩などに訪れる近隣住民が通りすぎる程度となり、活気は失われていた。

 広場前を自転車で通りかかった都内の会社経営者の男性(53)は、広場の様子をスマートフォンで写真に収め、「こんなに人がいないのは初めてだ」と驚きの表情を浮かべ、「人がいないのは、多くの人に(感染対策の)意識が浸透しているということ。いいことだと思う」と話した。

 県内で屈指の集客力を誇る観光地、横浜中華街(横浜市中区)でも自粛ムードが色濃い。主要な中華料理店を中心に多くの店舗が臨時休業し、下ろしたシャッターに休業を伝える張り紙をする店舗が目立った。休業中の店先で甘栗を販売している王花さん(40)は「いつもはもう少し売れるのに、今日はとてもひま。早くお客さんが戻ってきてほしい」と困り顔。

 さいたま市のJR大宮駅前の商店街で買い物をしていた市内在住の女子大学生(21)は「今日は東京で友達と遊ぶ予定だったが、家族にうつしたら怖いのでキャンセルした。この週末は地元でおとなしくしているつもり」と話す。

 一方、出勤途中という飲食業の30代男性は「外出自粛といわれても、店のシフトは空けられない。全員が土日休みを取るわけにはいかない」と肩をすくめる。

 また、市内で飲食店を営む60代の男性は「感染リスクを考慮して、今週末は休業に踏み切った。ただ、従業員の生活もあるので、いつまでも閉め続けるわけにはいかない」と窮状を明かした。

 一方、スーパーは多くの店が通常通り開店。東京都中野区の「サミットストア東中野店」には午前9時の開店前に約50人が並び、カップ麺などを買い求めた。

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