辞任の宮原社長、会見に姿なし…東証、試される企業統治 

2020.11.30 20:34

 東京証券取引所で10月1日に発生したシステム障害は、業務改善命令と宮原幸一郎社長の引責辞任で急展開をみせた。東証は今後、親会社の日本取引所グループ(JPX)とともに、信頼回復を急ぐ。自らが旗を振ってきたコーポレートガバナンス(企業統治)の一層の強化が試される。

 「業務改善命令を厳粛かつ真摯(しんし)に受け止め、再発防止と市場の信頼回復に向けて全力を尽くす」

 JPXの清田瞭(あきら)最高経営責任者(CEO)は30日の記者会見でこう述べ、JPXと東証の立て直しを誓った。

 しかしシステム障害の傷痕は大きい。東証の1日当たり売買代金は約3兆円に上り、膨大な投資機会が失われた。平成11年に取引を全面的にシステム化して以降、システム障害による終日売買停止は初めてで、政府が目指す「国際金融都市」構想にも水を差した。

 それだけにこの日発表された社内処分には、宮原社長の辞任のほか、清田氏や横山隆介最高情報責任者(CIO)の減給処分も含まれた。

 JPXの社外取締役4人で構成する調査委員会もこの日、調査結果を公表。外部の弁護士などによる「第三者委員会」が調査にあたる一般的な企業不祥事とは異なる手法だが、取締役14人のうち独立社外取締役が9人を占めるという独立性の高さがあってこその対応ともいえる。調査委委員長の久保利英明弁護士は「企業のガバナンスをいかに社外取がコントロールできるか、この委員会が一つの見本になって広めていきたい」と語った。

 ただ、30日の会見には社長を退く東証の宮原氏は出席しなかった。金融庁やJPXの指名委員会から辞任を求められない中で自ら辞意を固めたというが、東証を預かるトップ本人の口から辞任の理由が語られない状況には不透明感も残る。

 JPXは上場企業に企業統治の充実を繰り返し訴えてきただけに手本を示さねばならない立場。そのJPXがシステム障害では3度目の業務改善命令を受けたことは日本企業の信頼失墜にもつながりかねず、JPX自身の改革が求められる。

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