中国、新型コロナ全国的流行の兆し デルタ株警戒でパスポート発行も制限

2021.8.6 06:09

 【北京=三塚聖平】新型コロナウイルス感染症を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」策を進めてきた中国で、市中感染者の確認が相次いでいる。感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)の影響とされ、全土に31ある省・自治区・直轄市のうち少なくとも17で感染が確認され、衛生当局が対応を急いでいる。各地で全住民を対象にPCR検査が行われ、新たなパスポート(旅券)の発行制限など水際対策も強化された。

 中国国家衛生健康委員会による5日の公式の発表によると、4日に判明した新たな市中感染者は無症状者も含め全土で94人。南京市を中心にデルタ株感染が拡大している江蘇省のほかにも、湖南省、北京市、山東省、河南省など幅広い地域で相次いでいる感染に緊張が一気に高まってきた。

 南京市や、劇場での集団感染が発覚した湖南省張家界市などでは、全市民を対象にPCR検査が行われており、携帯電話の移動履歴を使った濃厚接触者の割り出しも進められている。

 感染者が確認された首都の北京市で一部エリアが封鎖された。出張や観光で感染確認地域から北京に戻った市民が、2週間の隔離措置を求められるなどしている。北京市当局は、なるべく市外に出ないよう市民に呼び掛けた。

 感染者が出ている都市から北京市に入る鉄道の乗車券も、販売停止となった。夏休みシーズンの真っ最中に感染が拡大しており、当局は人の移動に神経をとがらせている。

 国外との人的往来にも警戒を強めており、国家移民管理局は7月末、「不要不急の出国」では新規のパスポートを発行しないと表明した。パスポートの発行数は急減しているという。

 約14億人もの人口を抱える中国だが、ワクチン接種回数は17億回を超えたという。一方、中国製ワクチンは欧米メーカーのワクチンに比べて効果が弱いとの指摘もある。ただ、中国メディアは「デルタ株にも中国製のワクチンは効果がある」などと伝えている。

閉じる