日銀、追加緩和温存 市場は不信 物価目標で意見ばらつき
更新日銀は公約に掲げてきた物価上昇率2%の達成時期の後ずれを認めた一方で、もう一段の追加金融緩和を見送った。原油安の日本経済へのプラス効果や賃上げなど物価上昇の芽が出てきたことへの期待があるためだ。ただ日銀が2015年度の物価見通しを下方修正するのはこれで3回連続。物価上昇率は近くマイナスに突っ込む可能性もあり、日銀は当面、苦しい説明が続きそうだ。
「このままでは日銀は後手を踏むことになる。水際でデフレを防ぐため、追加緩和をやるべきだった」
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、日銀が切り札を温存したことに落胆を隠さない。
外国人投資家を中心に追加緩和への期待が高まっていただけに、30日の東京株式市場は急落し、日経平均株価は今年最大の下げ幅を記録した。
日銀が追加緩和を見送った理由について、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「(1)原油下落のプラス効果(2)春闘が促す好循環(3)米国経済の軟着陸-の3つの好材料が現実化するかどうかを、執行部は時間をかけてみなくてはいけないと思っているのだろう」と指摘する。
また農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「日銀は消費税率8%への引き上げ前の駆け込み消費が起きた2013年度下期に物価が堅調だったという“成功体験”を忘れられないのだろう」と指摘する。
