地域資源を生かす
ベンチャー相次ぎ誕生、北海道十勝 地方創生の成功例として政府も注目
■地方創生の成功例 政府も注目
高齢社会という地域課題の解決に挑むプロジェクトも立ち上がろうとしている。わたしはひつじ(帯広市)の伊藤由生子代表が、地元の羊牧場から収穫できる羊毛を要介護高齢者たちに編んでもらいフェルトを作るアイデアを抱いてTIPの第3期(17年7~11月)に参加した。
1人で起業する考えだったがワークショップを通じて「1人では実現不可能なアイデアと分かった。私と違う視点、意見を聞いているうちにプランが具体化し現実味が帯びてきた。みんなと一緒ならできると感じた」と振り返る。
今は合同会社設立に向け、認知症高齢者グループホーム経営者ら意気投合した仲間3人と奔走する。創業時に苦労する資金調達は、帯広信金の提案でクラウドファンディングを活用する予定。伊藤さんは「要介護の高齢者でも作業中は生き生きとしている。羊をツールに認知症にならない空間をつくりたい」と笑う。TIPを呼び掛けた野村総研の齊藤義明氏は「1人では無理でもチームなら化学反応が起きる。ゼロからイチを立ち上げる種に外から刺激を与えて、今までなかったクレージーアイデアに変わるよう促す」と説く。第3期を終えて28件の新事業構想が誕生し、5事業が会社設立に至った。
世界市場を視野に入れた本格的なビジネスから、スケールより地域の魅力を深掘りするディープなビジネスまで多種多彩だ。従来の規制に抵触するような新事業もあるという。
地方創生に必要なのは人材だが、十勝には「開拓者精神が残っており、ビジネスは自分で起こすという起業家の感覚を持つ火の玉人材は多い」(齊藤氏)。火種との化学反応で、魅力的な地域資源を生かしたベンチャーが勃興しつつあり、政府も地方創生の成功例として注目している。(松岡健夫)