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午後4時半終業に踏み切った味の素 働き方改革にかける社長の本気、現場からリポート

 「1人目のときは常に限界を感じていました。例えば育休復帰後は、チャレンジングな仕事ができなくなったりもした。でも、再雇用後は、やめたほうがいいと思った仕事はありません。休んで仕事の流れを止めてしまうより、1日3時間でも4時間でもできると、立て直す時間を考えたらずっと効率がいい。また、『子どもがいるからちょっとこれはやめておこう』ではなくて、『子どもはいるけど、できる?』という感じで、周りも仕事を任せてくれるようになってきた」

 会社全体の空気が全く違う。誰もが「効率よく働く」「制度を活用して自分で働き方を選ぶ」ことを考えている。そして、家庭でも諦めないことが増えた。

 「生活、変わります。例えば夜の寝かしつけで、バタンキューではなくて、1冊絵本を読んであげられる心の余裕もできました。夫が在宅勤務の日にはたまに食事の支度をしてくれていることがあるのですが、帰ったときにご飯ができあがっている、この感動。人が作ったご飯っておいしいじゃないですか(笑)。人生が豊かになりました。今は欲が出て、与えられたチャンスは全部トライしていきたいというのが目標です」

 水津さんは最後にこう言った。

 「こんな働き方があったら、もうちょっと若い頃に産んでおけばよかったと思うんです。もう少し若かったら、体力もあって、あともうひと頑張りできたのにって」

 魅力的な会社にしないと優秀な人材は集まらない

 働き方次第で、暮らし方も夫婦関係も変わる。またこの働き方は多くの有能な人材を惹き付けている。西井社長は働き方改革をする理由の1つとして「人材の獲得」を挙げた。

 「どの企業でもほしいと思う特定分野の人材は、どんな人気企業でも獲得が難しい。魅力的な会社にしないと優秀な人材が集まりません」

 コーポレート戦略部でM&Aの実務を担当する和田直大さん(米国公認会計士)は16年、味の素に転職してきた。同社は中途人材の採用にも熱心だ。

 「前職は朝も早いし、帰宅は深夜で、本当に大変な仕事でした。こういう働き方のままでいいのか、これは家族にとって幸せな働き方なのかと悩んでいました」

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