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【中小企業へのエール】外国人留学生 「漢字」の壁乗り越え、やる気引き出せ

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【中小企業へのエール】外国人留学生 「漢字」の壁乗り越え、やる気引き出せ

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 世界で日本語を学ぶ若者が急増している。そんな若者はまず、アニメや漫画で日本語に触れてから、その音の滑らかさにひかれ、母音と子音とで織りなす簡素な中にも艶やかなリズム感にひきこまれていく。やがて「もっと日本語を学びたい」という思いが強くなって本格的に勉強するようになるが、そこですごい壁を感じる。

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 それは「漢字」だ。漢字の音読みが文脈によって変化することを知って、皆頭を抱えてしまう。日本語の先生は、漢字には音読みと訓読みとがあり、中国から来た文字の意味を、大和言葉で理解して読み上げたものが訓読みで、中国の音のまま読み上げたものが音読みと教える。(旭川大学客員教授・増山壽一)

 そこで一度は、納得する。

 しかし、音読み自体が呉音、漢音、唐音と3種類もある。

 例えば「行」。「行革」では「ギョウ・カク」、「行動」は「コウ・ドウ」、「行灯」は「アン・ドン」と変化する。こうなると中国の留学生でさえ理解不能になる。

 「そういうものだから暗記しなさいと、頭ごなしにひたすら教える日本語の先生が多い」と留学生からよく不満を聞く。そうして、やはり日本語は極めて難しいと思い込んで学ぶのを止めてしまう。

 そんなときは、なぜ日本語の漢字には3つの音読みがあるかを説明している。そうすると学習意欲は俄然(がぜん)高まる。

 つまりこうだ。

 呉音は、邪馬台国の時代からの中国との交流の中で特に南方の呉の国から直接、または朝鮮半島南部の百済を通じて日本に入ってきた中国語の音。

 漢音は、8世紀に遣唐使や留学僧によって、もたらされた唐の都長安(現・西安)の音。

 そして唐音は、鎌倉時代以降、禅宗の留学僧や貿易商人によって伝えられた音。

 あの広大な中国大陸の地域と時代によって異なる方言が極東の島国に3種類の“地層”となって残り、生きている。今年は日中友好条約締結40周年にあたる。東アジアの大国、中国と日本が、時に韓国の橋渡しを受けながら、現在にまでいたっていることを思うと日本語を学ぶ意味も大きく変わってくる。あたかもラテン語が欧州言語の基礎をなしたように。

 いま、日本の中小企業にとって外国人留学生の活用は必須の課題。彼らのモチベーションをこんな形で上げたらいかがだろうか。

                   

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。56歳。

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