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医療機器、産学共同研究の注意点は

 □Kompath代表取締役CEO・高橋遼平

 医療機器ビジネスの産学連携で大学病院などと接点を構築したものの「住む世界が違う」ために戸惑う声が少なくない。そこで、共同研究を進める際の注意点を紹介しよう。

 第1に大学、大学病院、医師のインセンティブについて理解することだ。組織が違えば別の論理が働き、利害の対立が生じるものだが、特に企業と大学病院ではその傾向が顕著に表れる。

 医師は医療現場を良くする技術に興味があり、業績としての論文執筆に関心がある。一方、企業は収益性の高い製品の開発が関心事で共同研究体制を確立しても、必ずしも各論では一致しない。例えば、製品のリリース時期について企業は1年程度、医師や研究者は3年程度を想定することが多く、目線を合わせることが重要になる。

 第2に、大学病院の医師は医療、研究、院内の調整、講演と多忙なこと。共同研究を結んだ医師はプロジェクトマネジャーを担うことが多く、主な作業を研究室に所属する学生が行うこともある。そのため担当する研究者、学生とも積極的にコミュニケーションをとる必要がある。研究室のトップが時間を割けなければ産学連携プロジェクトは進まない。ある企業の担当者は「研究室が優秀な学生を多く集められるかが重要な要素」と語る。

 第3に、知的財産の権利範囲について事前に取り決めておくことだ。大学病院も、共同研究の成果が世に出て収益を上げることがあれば、その収益を次の研究の原資としたい。そのため知的財産、特に特許については正当な権利範囲を主張し、ロイヤルティーを求めることが通例だ。

 製品のリリース直前に双方の意向が異なり、時間がかかるというのは互いに望ましくないので、プロジェクト開始時点で大まかに取り決めておくことが重要になる。また、ロイヤルティーは事業計画上の費用に直接的に影響を及ぼすため、当初から見込んでおく必要がある。

 さらに、医療現場は多彩であることを理解する必要がある。医療機関によって、院内の規則や業務オペレーションは異なる。共同研究をしている医師が必ずしもユーザーの意見を代表するとは限らない。他の医療機関の声や個別の事情に照らし合わせつつプロジェクトを進めることが望ましい。その際、共同研究者に他の医療機関を紹介してもらうのも一つの手段だ。

 いずれも、問題は企業と大学病院のコミュニケーション不足に起因して生じることが多い。共同研究プロジェクトは、業務委託やコンサルティング契約ではなく、同じチームであるという意識を強く持って取り組む必要がある。業務的なコミュニケーションだけでなく、時間があれば食事を一緒にとることから始めるといいだろう。

                  

【プロフィル】高橋遼平

 たかはし・りょうへい 京大経卒。東工大環境・社会理工学院修了。工学博士。2012年三菱商事入社。15年10月医療系ITスタートアップのKompathを設立し、共同創業者兼代表取締役CEO。大学付属病院と共同で医用画像処理アプリケーション開発に取り組む。30歳。東京都出身。

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