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【インタビュー】経済同友会・小林喜光代表幹事 経営者自ら変革の必要性発信を

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【インタビュー】経済同友会・小林喜光代表幹事 経営者自ら変革の必要性発信を

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 --4月で2期4年の任期が終わる。振り返ると

<< 下に続く >>

 「日本の経営者の活力がない、品が良くなりすぎているというのが最大の印象。デジタルやAI(人工知能)でこんなに世の中が変わろうとしていて、終戦後よりも革命期といえるのに実感していないし、認識が足りない。良い子が社長になり、角張った人間が社長になれなくなった。創造力豊かでリスクを取れる人をえらくしないと、いい人材が入らなくなる。優秀な学生は起業したり、外資系に就職してしまっている」

 --集大成として「Japan2.0」をまとめた

 「東京五輪・パラリンピック後から戦後100年(2045年)までの国の在り方を、Japan2.0最適化社会の設計として提言した。ジャパン・アズ・ナンバーワンと位置付けられ、アナログのモノづくり技術を極めた日本だったが、12年に来日した米ダウ・ケミカルのアンドリュー・リバリス会長から、『化学業界は再編されていないし、国内総生産(GDP)も全然伸びなくなっている。日本はいつバージョンアップするのか』と指摘された。データを集積してマーケティングに使う、バイオサイエンスと合体するとか、金融テクノロジーのフィンテックなどのデジタル技術分野で日本は2~3周遅れ。提言はバブル経済崩壊後の日本が世界に敗北し、挫折した反省の上に立っている」

 --日本は再生するか

 「日本ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの頭文字)のようなデジタル系プラットフォーマーも誕生しなかったし、中国の深センではキャッシュレス化が進み、無人店舗ができている。日本人は74.7%が現在の生活に満足しているが、ゆでガエルでしかないという明快なメッセージがJapan2.0。経営者自身が過去の延長線上に明日はないと認識し、変革の必要性を国民や政治、行政にも発信する。明らかに負けたという認識で、次に何かしないといけない」

 --経済同友会は今後どうあるべきか

 「業界団体の経団連、中小企業を代表する日本商工会議所に対し、同友会は個人が会員で自由に意見が発信できる。お互いの研鑽(けんさん)の場、交流の場だが、経済界だけで閉じこもって心地良く似たようなことを言うのではなく、若い人や学問の世界からも議論の場に入ってもらう。提言にとどまらず、責任を持って行動する政策集団としてやっていくことに意味がある」

 --人手不足と外国人、シニア雇用をどう考える

 「外国人の受け入れには2つ問題があり、一つは景気動向。リーマン・ショック後、シンガポール政府はマレーシア人やインド人をみな帰国させたが、日本で受け入れる以上は覚悟を決めて社会保障、健康、給与対応をしないと。もう一つは業務のAIやロボット化を前提に、制度設計すること。一方、シニアは将来的に75、80歳まで働くことも考えられ、給与の分配はシニアも含めて労働生産性や能力の高い人を厚くすることが競争上、重要になる。外国人労働者も同じで、人材獲得は韓国や他の国との競争だ」

 --景気の見通しは

 「中国でモノの値段が下がりつつあるなど、一部で変調を来している。技術をめぐる覇権争いを背景に、米中の追加関税猶予期間の90日間が切れ、関税が25%かかるとなると、明快に米中経済は悪くなるし、日本にも影響が出る。消費増税対策は十分すぎるくらいやっているが、リーマン・ショックから10年以上がたち、歴史的にも景気回復局面は変化する」

 --経営トップ逮捕や品質不正問題が相次いでいる

 「安倍晋三政権は、コーポレートガバナンス(企業統治)改革を熱心にやってきて、社外取締役が2人以上いる東証1部上場企業も9割を超えた。海外や外部の目を入れて悪いものをオープンにしようとしたら、10~20年蓋をしてきたものが出てきたと捉えるべきだ。化学業界でも、基準が厳しくなったことで統計上は事故が増えたが、逆に大事故は起きていない」

【プロフィル】小林喜光

 こばやし・よしみつ 東大大学院修了。1974年三菱化成工業(現三菱ケミカル)入社。三菱ケミカルホールディングス社長を経て2015年4月から会長。同月から経済同友会代表幹事。72歳。山梨県出身。

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