マネジメント新時代
EV用ワイヤレス給電、いよいよ本格化か
和田憲一郎
その後スムーズに行くかと思われたが、なかなか進展が見られなかった。いくつかの要因があるが、三菱自動車の「アイミーブ」、日産自動車の「リーフ」後にEV普及が足踏み状態となり、EV用ワイヤレス給電に弾みがつかなかったことがその一つだ。また13年になると、クアルコムは、ニュージーランド大学研究者が開発した「ハロIPT」を買収し、これまで機器は開発しないと明言していたにもかかわらず、自社開発に着手した。
その結果、ワイトリシティとクアルコムの2陣営が、ワイヤレス給電の国際規格化をめぐって激しい争いを続けることになる。両陣営とも、自動車メーカー、部品メーカーなども巻き込み、国際規格化は混沌(こんとん)としてしまった。しかし、近年、クアルコムはこれから始まる5Gに経営資源をつぎ込むため、ドメインとはいえないEV用ワイヤレス給電から撤退するとの判断に傾いたようだ。
普及地域や課題は
今回の買収劇で、ワイトリシティはクアルコムの持つ技術やライセンス権、1500件に及ぶパテントも全て譲り受けるとのこと。これでEV用ワイヤレス給電の規格争いにも終止符が打たれた。
では、どこから普及するのであろうか。筆者は、新エネ車の進展が著しい中国から普及すると見ている。18年の中国自動車販売台数は2808万台と、前年比2.8%減で28年ぶりの変調となった。しかし、新エネ車は17年の78万台から62%増の126万台まで急伸している。
また、第14次5カ年計画(21~25年)にワイヤレス給電目標も盛り込まれるのではないかと推察する。中国では、中国の推奨国家標準規格である「GB/T」に登録された段階で一気に普及拡大する。