遊技産業の視点 Weekly View

遊技産業におけるAIの可能性

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表 栢森秀行

 AI(人工知能)への関心が高まりを見せるなか、この技術はさまざまな業界に影響を及ぼしつつある。それは遊技業界も例外ではない。これについて意見を述べる前に、まずAIに対する私の考えを記しておきたい。

 人間の素晴らしいのは、動物が生き残るために何十億年も進化させてきた複雑な神経ネットワーク上に言語による論理や知識を構築し推論など高度な知性を獲得できたことであり、今の逐次処理コンピューターではまったく足元にも及ばない。本当にコンピューターが知能を獲得するのは、人間の神経回路を物理現象以上の速度で処理できる時代まで不可能だと私は考えている。ゆえに理論を知ろうともしない人が「近いうちに人工知能が人間の仕事をすべて奪う」などと世間に警鐘を鳴らすのは、私から言わせれば茶番だ。技術の限界を理解しているはずのコンピューター産業も、AIバブルというべき状況にありそのことを指摘しない。

 AIは限界を理解して使う分には非常に有用な技術であり、社会全体の効率を上げるためには不可欠な技術になると思われる。現時点での技術で大事なことは、サンプルを多く用意すること、人がチェックを行い丁寧にエラーや異常事象を取り除くこと、学習しやすいようにデータを正規化することである。また学習手法は多数あり試行錯誤も大切だ。そして、一番重要なことは人工知能だとは思わず、単なる最適化マシンだとわかった上で目標のゴールを設定することである。

 では、この技術が遊技産業にどのような影響を与えるのか。遊技業界の収益モデルは世間で思われているよりはるかに変動が少ない。遊技客1人1時間あたり1000円以下の収益で成り立っていて、人件費や建物・設備・機械代や電気代などをその中から支払い、残る利益は100円以下という薄利な商売だといえる。

 このような環境下で私は、機械学習を正しく使うことにより各方面の最適化が進み、業界の効率がマクロレベルで良くなる可能性があると考えている。この影響は甚大で、投資の効率が改善されることでファンの感じる楽しさが増すことにもつながり、業界全体の流れが変わると私は期待している。

                  ◇

【プロフィル】栢森秀行

 かやもり・ひでゆき 1968年大阪府生まれ、愛知県育ち。京都大学大学院情報学研究科修了後、ダイコク電機入社。SIS分析の拡充、CR事業立上げ等を行い2012年代表取締役社長に就任。退任後の18年からスパイキー代表取締役。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング