IT
5G 対応事業モデル築けねば淘汰 実積寿也・中央大教授
第5世代(5G)移動通信システムの導入で、通信の在り方は次の段階に進む。通信による時間のずれが1000分の1秒しかないなど5Gの潜在力を生かすには、一段の技術革新とサービスの高度化が必要だ。端末の進化だけにとどめるならば、社会が5Gに投資をする意味はない。
5Gでは無数の機器が家や街角に置かれる。カメラやセンサーが相互通信し、大量のデータを人工知能(AI)がさばく。消費者はさまざまなサービスの恩恵を受けるが、通信の存在を意識しない「モノのインターネット(IoT)」時代の幕開けとなる。
企業や行政にとって情報を得るコストが一段と下がり、経済活動が劇的に効率化する。企業は5Gに対応した事業モデルを構築できなければ淘汰(とうた)されるだろう。個人向けでは、およそ10年単位で進化してきた端末の形も根本的に変わり、スマートフォンの次が出てくるかもしれない。
人よりも端末の数が多い時代になり、消費者と端末の接点を誰がコントロールするのかが焦点となる。ネットだけでなく、現実でも情報があふれるため、ここを束ねてサービスを提供する企業が現れれば、ネットで力を発揮してきた米グーグルや米アマゾン・コムなどを超える可能性もある。
今後はサービスを提供する企業に大きな信頼が求められる。消費者の生活が丸裸になり、便利な半面、恐ろしい時代と言える。
米国が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め出そうとしたのは、安全保障上のリスクに加え、中国が5Gを押さえてしまうと、米国企業が不利に立たされると見ているからだ。ただ安価で優れた中国の技術を使えないと、長期的には技術革新が停滞する恐れがある。(談)