マツダ 販売店をデザイン、接客に変化
□マツダ常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当 前田育男さん
--「関東マツダ」本社ビル(東京都板橋区)など車のデザイナーが販売店のデザインを監修している
「車という作品を作り込むデザイナーは、最も美しく見てもらうために何が効果的かも知っている。将来のブランドスタイルまで担う店舗を作る思いで、6年前の洗足店(同大田区)改装から始めた。広島・東京に拠点がある建築設計事務所『サポーズデザインオフィス』をパートナーに高田馬場店(同新宿区)などもリニューアルし、関東マツダの首都圏のブランド旗艦店4店が完成した」
--リニューアルのポイントは
「ブランドを総合的に発信し、体感・交流してもらう場にしている。このため車同様、『引き算の美学』やフォルムの親和性をテーマにした。車はどんな角度から見ても安定したデザインにしているが、店舗も奥行きなど彫りの深さ、陰影の付け方などを工夫し、視覚的に安定した立体としている」
--実際の店舗ではどこに反映させたか
「目黒碑文谷店(同目黒区)のガラスは車のフォルムに合わせ複合的な曲線にし、本社ビルの内装は車の色が引き立つように色調や照明を落ち着いたものにした」
--どんな効果を生んでいるのか
「首都圏以外からの来店や、輸入車からの乗り換えなど客層が広がった。一番変わったのは販売員。モチベーションや自信を持ち、立ち居振る舞いから接客が変化している。海外の販売店オーナーも見学に来た」
--この先の目標は
「将来的には『ブランドの様式』を作っていきたい。マツダの生きざまそのものが形になり、根底にDNAや血といった、われわれにしかないことが感じられるもの。車のデザインの進化とともに販売店も作り込むことで、様式の将来像、方向性も見えてくると考えている」
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【プロフィル】前田育男
まえだ・いくお 京都工芸繊維大卒。1982年東洋工業(現マツダ)入社。RX-8などのチーフデザイナーを担当し2009年デザイン本部長。10年に日本の美意識を礎にしたマツダのデザイン哲学「魂動(こどう)」発表。13年執行役員。16年から現職。広島県出身。