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ロボットトラクター相次いで投入、農機メーカー熾烈な開発競争

 ロボット技術や情報通信技術(ICT)を駆使して農作業の効率化を図る「スマート農業」が実用段階を迎えた。大阪に本社を置く農機大手のクボタやヤンマーなどが自動運転技術を搭載した最新機種を相次いで市場に投入。作付け状況や肥料の散布量などのデータをクラウド上で管理し、収益改善につなげるサービスも普及してきた。農家の担い手不足や高齢化が問題になる中、最先端技術による農業再生に期待が高まっている。(林佳代子)

 省力化実現

 7月末、富山県高岡市の中心部から南西約3キロの畑で、オレンジ色のクボタのトラクターが農薬のまかれた土を耕していた。運転席に人の姿はない。作業員が近くで監視していれば無人で動かすことができるロボットトラクターだ。

 リモコンを操作して発進を指示すると、衛星利用測位システム(GPS)で位置情報を把握し、作業ルートを自動で進む。畑の端まで行くと素早くターン。約20アールの区画を30分もかからずに耕し終えた。

 ロボットトラクターを活用するのは、農家から請け負った計約130ヘクタール(約600枚)の田畑で米やサトイモ、ニンジンなどを栽培する同市の農業法人「クボタファーム紅(くれない)農友会」だ。

 紅農友会は規模が拡大して複雑になった農作業を効率化しようと、3年前からクボタの営農支援サービスを活用。農作業のデータをクラウド上で管理するとともに、最新農機などの先端技術を積極的に取り入れてきた。2年前にはクボタのグループ会社から出資を受け、農業経営モデルの高度化を加速している。

 田畑を耕す際、従来のトラクターはベテラン作業員でも幅十数センチの誤差が生じるが、ロボットトラクターなら5センチの範囲に収まる。稲作で最も気を使う水の管理も、スマートフォンの操作で水田の給排水バルブを開閉して水位を自動調節するシステムを導入した。

 今年3~6月の繁忙期には、全17人の従業員が作業時間を平均2日間も短縮できたという。紅農友会の山口義治専務取締役は「気が抜けず、苦しいことが当たり前だった農業が変わった。未来に希望を持てるようになった」と話す。

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